第1章 生涯学習の理念

1、生涯学習前史
明治5年の学生発布以来、日本では100年以上の長きに渡って西欧型の学校教育システム体系が行われてきた。その背景には近代社会が産業化を進めていく上で効率的な教育システムを求めたという背景がある。それは、準備期間と活動期間を混在させずに、準備のみを目的とする期間を前もって一定期間に終えておき、その上で生産活動にその成果を最大限に活用していくという「フロントエンドタイプ」の教育システムが適していると考えられたからである。

2、生涯教育理念の登場
しかし、第二次世界大戦後の社会と経済の復興が第一段階を迎えたころより、産業化の進んだ諸国の教育システムには変化が生じる
①質や多様性に対する社会の要請が強まった
②直線的に拡大してきた学校教育と教育政策に疑問が呈されるようになった
③技術革新の発展により、フロントエンドタイプの教育が効果を演じてきた

生涯に渡って学ぶという概念は、1960年代に登場したが、当初は生涯学習ではなく生涯教育として提唱された。当時のユネスコ成人教育課長ラングランは次のようにまとめた。
■ラングランの生涯教育
「生涯教育は生涯にわたって統合される教育である」(アンチフロントエンドタイプの教育論)
①人の誕生から死に至るまで、一生を通じて教育の機会を提供する
②人間の発達における総合的な統一性という観点から、様々な教育機会を調和的に統合する
③労働日を調性し、教育活動や文化活動に利用しうる休暇などの措置を促進する
④既存の小中高等学校を地域文化センターとして活用する
⑤従来の教育観を根本的に改め、教育本来のあるべき姿を回復するために、生涯教育の理念の浸透に努める

ラングランの教育理念は、社会と人々の側からの両方の要請があげられた。技術の進歩はオートメーション化、労働時間短縮を実現し、生活の中に「生きがい」や「自己実現」を追及する余裕を与えたためである。

3.生涯教育と生涯学習
ラングランの教育理念には「人が生涯に渡って教育される」という批判も多かった。そこで、1972年に元フランス首相フォールを委員長とするユネスコの教育開発委員会は「フォールレポート」をまとめる。①学習者を教育される客体としてではなく、自己教育の主体としてとらえなおすこと
②社会的地位や財産知識などを手に入れるための「持っために学ぶ」から「人として生きることを学ぶ」へと転換すべきである(知ることを学ぶ)
フォールレポートは「生涯教育から生涯学習へ」という大きな転換を決定付けた

■生涯学習の理念
制度的に支援され、権威によって提供される
生涯学習は、より自立的、自己管理的名活動をシフトした概念である。

4、生涯学習の現代的意味
1989年 「生涯学習の振興のための施策の推進体制の整備に関する法律」(生涯学習振興法)の成立。
1993年 ユネスコの21世紀教育国際委員会設立。1996年ドロールレポートを出す。
「知ることを学ぶ」「為すことを学ぶ」「「ともに生きることを学ぶ」「人として生きることを学ぶ」の4原則を提示。
1999年 ケルン憲章
「われわれの社会的、経済的目標を達成するためには、生涯学習への投資に対する更なるコミットメントが必要である」
①生涯学習は貧富を問わず無料であるべき
②生涯を通じて学習を継続することを奨励または可能とすること
③発展途上国は援助を受けるべき

■生涯学習の定義
生涯のあらゆる時点で、あらゆる場において、あらゆる教育資源を活用してなされえる、自発的かつ自立的な学習行動



5、生涯学習をめぐる諸概念
■継続教育
義務教育の後という意味では職業補習教育、中等教育の後では専門教育、就業後であれば現職教育、学校教育後と言うことであれば成人教育を言うことになる。

■成人教育
成人に対して提供される教育を言う。職業的な知識技能や専門性の高い教育は含んでいない。何らかの事情で学校教育機会を逃してしまったり、移民などで新たな社会化が求められる場合に、成人後教育は提供される(識字教育・移民教育)しかし今日では趣味や楽しみなどのレクリエーション目的にも対象が拡大している

■高齢者教育
背景には高齢化の進展で、職を退いた後も余生とは捉えられなくなったこと、年金で高齢者にも経済的名余裕が出来たこと、高齢者全体の学習意欲の高まりなどの要因がある。高齢者に対する教育には、社会的地位役割の考慮、一般の成人とは異なった動機付けの方法などが必要であり、成人教育の延長線上にあるものではない。

■リカレント教育
学校教育が終了した後に職業生活に入ってからも、必要に応じて教育を受けなおすこと。どちらかというと教育を受ける側から見た概念ではなく、提供者側の意味合いが強い概念である。職業技能の向上といった現実的で具体的な目的のために制度的な教育機会に回帰するのが本質である。

■リフレッシュ教育
1993年に当時の文部省から出された新しい概念
①対象者が職業人であること
②教育内容が職業上の知識・技能に関するものであること
③実施機関が高等教育機関であること
それまでの社会人特別選抜や夜間大学院、昼夜開講制、科目履修制度などの、職業人に対する柔軟な高等教育機会の提供という大きな枠組みの中に整理したもので、現実には高等教育政策と生涯学習政策との相互補完的融合である
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第2章 近代化と教育

1、前近代としての封建社会
封建社会は、農業生産が発達し、安定したことにより、それ以前の軍事的優越性などの目に見えない条件ではなく、恒久性のある実態的な生産手段としての土地の所有を源泉とすることの可能となった社会である。つまり、所有する土地が支配力の客観的な指標として明示されることである。それゆえ封建社会は、必然的に身分制社会という形態を取る社会であった。

しかし、封建社会での土地所有者は、より高い地位や権力を欲し、戦闘力を保持することで主従関係や所領の安堵という土地所有の正当性を根拠とするのが一般的になった。権力者の支配の正統性は、絶対的な宗教的権威に裏打ちされることにより安定する。封建制での身分制も、宗教を精神的支え(正当性の原理)として、人を統制していった。

しかし中世末期の農業革命と商人資本の蓄積、エンクロージャー(土地囲い込み)による都市への人口集中などにより状況は一変した。

封建社会の末期には、共同体を解体して市場経済を広く浸透させることで利益を得た産業資本家(プチブルジョワジー)層が、領主や聖職者と対立し、18C以後、従来の社会的勢力を打破するだけの勢力を身に付けた産業資本家層によって引き起こされた市民革命が起こる

2、伝統的な秩序と規範の崩壊
市民革命は、封建制と秩序を破壊し、市民社会を創出することに成功した。しかし一方で、人々の結びつきや伝統的な規範、宗教道徳を弛緩させ、弱体化させてしまった。

しかし、一時的に無秩序化しても産業の発展と合理的な活動によってやがて改善されるはずだという楽観論がはびこった。福沢諭吉の「学問のススメ」もそうした放任主義的な自然調和観に基づいてかかれたものである

■学問のススメ
福沢諭吉が最も強く主張しているのは「人は平等に生まれた」ということではなく「平等に生まれたはずの人間に上下の差が生じているのは、実学的な学問により自らの価値を高めたか否かである」ということである。

3、市民社会における身分制学校の利用
しかしその後、個々の産業資本家による利潤追求が社会の利益と相反することが往々にして起こった。(例 女工哀史)機械化に伴い、熟練を要しなくなった肉体労働は、産業資本家や親によって児童・年少者の労働需要に拍車をかける。

このような中で社会改良家は、対応策として被支配層の子女のための学校「ビレッジ・スクール、寺子屋」を提唱する。しかし、従来の支配層が自分たちの身分や特権を世代を超えて維持するために運営していた学校は形を変えて(大学や藩校)存続していた。

4、国民国家と国民教育
国民国家とは、市場経済の発達によって形成された民族的統合を基礎に、民族的同一性を持つ人々が、自国意識と共族意識を持って成立させた、排他的な主権を有する政治的統合体を意味する概念である。

■国民国家の条件
・近代市民社会である
・一定の同一性を持つ国民からなる国家である
・言語・文字・度量衛・通信・報道といったコミュニケーション手段に共通性があること
・単一の中央集権的な政体の存在
これらに加えて、他の国民国家に対する独自性を有していること

■国民としての態度と行動
①国内で必要とされる何らかの生産活動に参加すること
②生活財を得るための消費活動に参加すること
③社会生活への参加

5、学制序文と教学聖旨

1872年 「学制」の序文
1879年 「学制」を廃して出された「教育令」の教学聖旨

学制は自由放任的な教育観を提示したのに対して、教学聖旨は明らかに一定の国民形成に向かって明確な姿勢を打ち出している。これが後の1890年「教育勅語」に繋がる

第3章 人材養成と学校教育

1、近代社会における人材概念
人材は、単に労働者とかサラリーマン、社員などという表現とは異なり、企業や職場にとって役立つ具体的能力や知識、技能を有する働き手といった印象で用いられる概念である。

一般に、資本主義的な生産形態は、その進展に伴っカンやコツといった熟練した働き手に固有の複雑な技能を単純化し、伝統的な職能を解体していく傾向を持っている。一方で、一定の職務につくための学業水準は確実に上昇している。

20年前は一部の技術者のみが使っていたパソコンが、いまやかなりの職場で必須となっているように、このような技能水準の上昇は、必然的に数学や外国語の要求水準を上げる。つまり現代社会は、個人の特殊な熟練はそれほど求めないが、汎用性のある能力は、要求水準を高めていくという傾向を持っている。

2、学校の人材養成機能
■アメリカの教育学者ホッパーの「学校教育の中心的機能」
①社会化
その社会の自立した構成員として必要とされる知識・技能を身につけ、規範を内面化すること
②選別
子どもたちを彼らの能力・実力に適合した階層的地位に振り分けるための評価
③正当化
①②の機能とその結果を正当なものとして認定し、一定の権威を持って明示すること
(これが一番大事)

このようなシステムを従前に機能させるため、学校教育には全員が意欲的に参加するように仕向ける機能(ウォーミング・アップ「国民的統合の基礎))と、選抜の結果をスムーズに受け入れる機能(クーリング・アウト「職業階層への分化を軋轢泣く進める機能」)が備わっている。

3、教育暦(学歴)と人材雇用市場
教育暦の高いものは短いものより高賃金で、良好な雇用条件の元に働いている。しかしこれには次の4点が常に成立していないといけない
①教育・訓練には人々の生産性を高める効果がある
②教育・訓練を受ける人々は、対費用効果が最大になるような教育への教育への投資行動をとる
③労働市場は完全に競争性であり、情報の伝達も安全である
④人々は、訓練・教育によって、すでに一定水準の技能や知識を身に付けた労働主体として市場に登場する

しかしこうした前提は、恒久的に成立するとはいえない。なぜなら大卒者より有能な高卒者の存在が決して稀ではないからである。なぜなら、実際は就職してから学ぶことのほうが多いのが現実であるから。ではなぜ高学歴者はそうでないひとより高収入なのか。

■スクリーニング(ふるいわけ)仮説
求職者は自分の能力を最大限に見せ、雇用側は必要な能力をより少ない費用で確保しようとする。そのような関係では、雇用側が個人の能力を適正に把握することは難しい。そこで「性別、年齢などの属性」「職歴・学歴・成績・資格などの業績」「実施するテストの結果」「面接」などによって篩い分ける(マーケット・シグナリング)

マーケットシグナリングには雇用差別の要因を背t名する統計的差別理論がある。人種や女性、低学歴者を門前払いすることがあるが、これは雇用側がそういうグループに属するものは生産能力値が平均より劣るということを、統計的・経験的にしって(あるいは信じて)採用を差し控えるからである。その結果求職者は、さしあたり学んだ中身ではなくラベルとしての教育暦をアピールすることになる。・・・学校教育の空洞化

実は、あらゆる労働市場でも求人・求職競争は完全に自由ではない。例えば中間管理職に空きが出れば、外部募集をせず内部の昇進で埋められる。・・・内部労働市場

それに対して求職者と求人者が賃金や雇用状態を媒介として取引する公開の競争的労働市場は「外部労働市場」と呼ばれ、新規卒採用・特殊な能力や技能を持つもの、パート職などである。

内部労働市場では若い新卒者が選好される。技術そのものではなく訓練しやすさ(トレナビリティ)に関して行われる。これが学歴競争を激しくさせる最大の要因である。新卒者は働かせてみないとわからない一面がある。教育暦はそれを推測する最も重要な情報のひとつとなる。

4、日本型学校教育の特質

■アメリカのカミングスの分析
①教育に関する関心の高さと多様性
②低コスト
③平等な教育条件の配分
④カリキュラムのレベルの高さ
⑤統合性
⑥身分の保証された教師
⑦良心的な教師
⑧全人教育への指向
⑨公平な授業

■カミングスが触れなかった高等学校における実践を中心に観察したローレンは「日本の学校教育は非常に効率的で、建前としては平和主義を堅持し、秩序だった教育実践が行われている」と指摘している

■学校戦後教育の特徴
①戦後一貫として単線型に近い形態をとっていた・・エリートと大衆という二極分化が起こらない
②厳密な年齢主義を堅持してきたこと・・・進級は年齢のみになり、能力による階層化が阻止された
③学級(学校)家族主義という文化を堅持してきたこと・・・本来なら大に集団であるはずの学校を、あたかも第一集団のように意識させ、統合性を高める上で効果を持った
④教員の質が保たれていること
⑤家庭との関係が保たれていること・・・学校教育の正当性が保たれてきた
⑥上級学校への入試の厳しさが維持されてきたこと
⑦努力主義が文化として尊重されてきたこと

5、日本型学校教育の変質

1980年代・・・受験戦争の激化、教育需要の多様化と不整合、親の高学歴化とのギャップ、画一的過ぎる平等主義
1984年・・・学歴主義の弊害が取りざたされる(学校改革が論じられる)
1990年代・・・様々な不整合が生じるが、改革は実現までに時間がかかったり、タイミングを逃したり中途半端な改革で済まされたりした。
①学力低下
②画一的試験制度の問題点と顕在化:大学の受験科目にない勉強はしない、点の取りやすい科目に人気が集中する
③組織としての学校集団の危機:いじめ、学級崩壊、教師のアパシー、全人教育の危機
④規範形成力の低下と逸脱行動の増加:非行数・非行率の増加

6、フロントエンド・システムの見直し
一度学校を卒業したら再びそこに回帰出来ないというシステムを見ることが問題である。個々人の必要に応じて自由に学習と労働の間を行き来でき、そのことによってなんら不利益も被らない、という制度を整備していくことが有効な解決策となる


第4章 職業と教育訓練

1、職業と職能
職業は単なる労働ではなく、社会の分業体系に組み込まれた一定の職能を伴う持続的活動である。しかし、旧来のフロントエンドタイプの教育システムであっても、学校だけで実際の職業的スキルをすべて身に付けさせてきたかというとそうではない。
①職場で必要とされる実際的名知識技能は就職後に提供されなければならない
②昇進や配置転換で、そのつど新たなスキルを身に付ける必要がある
そこで、就職後の職業生活においても、なんらかの形で教育訓練の機会「企業内教育」が求めらることになる

■企業内教育について
日本社会では、伝統的に職業に従事しながらそれを十全に遂行するための技能を取得すること「OJT(On-the-Job-Training)」が堅固に根付いていた。それは商家の丁稚制度や職人の徒弟的な伝統の継承があり、終身雇用制による企業の「囲い込み」が常態となっているからである。

2、日本型企業内教育とその変遷
■徳川期
町人学・・・読み・書き・そろばん、商人・町人としての心得や知識、技能、生活上の倫理(三網五常十義)などの指導が、商家の手代、丁稚や親方についている徒弟に対する教育の基準となっていた

■明治期以降
官制や企業付設の職工養成所が設けられた。しかし民間の製造業では、義務教育終了後に職業教育を就業しながら行うというOJT的な携帯が継承されていた。それは第二次大戦後にも基本的には継承された。

■戦後
しかし戦後は次第にアメリカの合理的経営管理教育に基づく人事教育が入ってくる。最も影響力の大きかったのはデミングの開発したQCである。
QC・・・Quality-Controlの略。品質管理だけでなく、「QC活動」として経理や総務にもサークル活動として浸透した。
とはいえ、一般的には終身雇用や年功序列、企業内組合、新規学年一括採用など、いわゆる「日本型経営」が堅固であることには代わりはない。

3、OJTの経済合理性

■ベッカーの定理
働く労働者が一定期間の訓練を受ける
         ↓
その間生産に従事しない(当然訓練を受けていないものより賃金が低くなる)
         ↓
訓練後、受けなかった者より生産性が高くなる
         ↓
企業は長く仕事に従事するように動機付けるため、生産性の上昇分の一部を賃金に換金する
         ↓
企業にとっても労働者によってもその技能を有能に活用できる
         ↓
労働者の企業内部への「囲い込み」


4、日本型雇用制度の変化
■日本型雇用制度が近年見直しを迫られている理由
①著しい技術革新(コンピューターの導入)
技術の陳腐加速度が早まり、従来型の「熟練」の価値の低下
②雇用携帯の変化
フルタイム正社員→契約社員→パートタイマーへ
女性労働力の増加傾向
③労働と個人生活との関係の変化
技術革新により労働時間の短縮が進み、生活の重心が自由時間や余暇に移ることで、実労働時間からOJTを排除する風潮や新たな技能の習得は自己責任の範疇に属するという風潮を生む

このような理由から、従来の企業内教育を維持することが難しくなっている

5、リカレント教育とその背景
ラングランの「生涯教育論」では、「生まれてから死ぬまで誰もが与えられた教育を強制される」という印象があった。コレに対して批判の先頭に立ったのが教育研究革新センターであり、「リカレント教育」という教育改革理念を打ち出した。

リカレント教育は、すべての人に対する義務教育終了後または基礎教育終了後の教育に関する総合的戦略であり、その本質的特徴は、個人の生涯に渡って教育を交互に行うというやり方、すなわち他の諸活動と交互に、特に労働と、しかしまた、レジャーおよび隠退生活とともに交互に教育することにある

■簡潔なまとめ
①従来青年期に限定されていた教育機会を個人の全生涯に渡って分散
②学校による教育と職業経験とを交互に行うことによる効果を重視
③そうしたシステムが十全に機能するように諸環境を整備すべき

6、近年の取り組み
それには18歳未満人口の減少に伴う経営危機から社会人をターゲットにした市場の拡大という要素があることは疑いのない事実である。

また、企業内教育においては、新しい技能や知識を習得する必要が生じた場合に、直属の上司や先輩が指導役「メンター」「エルダー」と呼び、ある程度専任化・組織化することでOJTを効果的に動機付けしようとしている企業が多くなった。

一方、従来型の職能教育・企業人教育の範疇でなく、啓発教育などの活動も活発化している。企業ではこのような自己啓発活動に対して、通信教育の費用補助・資格取得への援助・講習会への派遣・学会への参加援助などの支援を行っている。

定年準備教育では、定年後の不安や緊張を緩和し、定年後の生活への適応を図るための教育プログラムがある。(PREP)

第5章 成人教育と社会教育

1、成人教育の背景
成人教育とは、成人に対する教育行為である。しかし、本来的には成人は教育の対象として考えられていない。その成人になぜ教育が必要なのか、また成人教育のためになぜ社会の財の一部が割かれなければならないのか、そして何よりもそれが単なる趣味の集まりでなく、制度的な「教育」の範疇に含められるのはなぜか。

■理由
①学校教育の違いによって生じた社会経済的不平等の緩和ないし部分的解消(経済力の差・出身階層の差・性差)
②国民・市民の基本的な権利としての自己実現要求に応える
③移民順化政策として

2、成人教育の意味
1976年 第19回ユネスコ会議
成人教育を成人に対するすべての組織的教育過程と明確に定義づけている。このように考えると継続教育や民衆教育、社会教育と呼ばれているすべての生涯教育・生涯学習機会を含めることが出来る。

成人教育を限定的に用いる場合は、直接的に職業技能や資格に結びつくもの、イギリスにおける成人の趣味的学習や余暇活動、ドイツの一部の成人教育などである。

3、近代的成人教育の発生と推移ー英米を例としてー
■イギリス
1711年 夜間学校(社会政策としての大衆教育活動)
19C後半 ケンブリッジ大学の講師が国内各地を回る拡張講義
現在  公開大学

■アメリカ
①正規の教育を受けられなかった人や移民を対象にした識字教育、成人基礎教育、アメリカ化プログラム、夜間学校、ライシアム(本来なら学校が行うべき教育活動を補償的に行う)
②ランドグラント(土地交付)大学を各州に設置したモリル法の制定、大学拡張プログラム、公立職業学校
③通信制を取り入れた教育普及活動、日曜学校、公的継続教育機関

<アメリカの成人基礎教育の特徴>
①基本的に移民国家であること
②中等教育レベルでのドロップアウトが非常に多い。
③市や郡によって設立され、公費と寄付でまかなっている
④まったく字が読めないレベルから12年生(高3)までコースがあり、就業には高卒資格が不可欠なため高卒資格取得のための過程や準備過程が用意されている。
⑤性別は女子の受講生、人種ではアフリカ系アメリカ人が比率を伸ばす傾向にある
⑥女性の場合シングルマザーが多い
⑦入学時のレベルは小学校高学年から中学校低学年程度である

4、日本における社会教育の形成
19C前葉  石田心学の講舎(塾)が成人を対象に実践的哲学を各地100箇所以上で教える。しかしこれが明治以降の近代社会に引き継がれることはなかった
明治以降  天皇中心の中央集権国家に適応した考えを身につけさせるための国家主義的な教化活動企図した
1921年(大正10年)  文部省の官制改革により、社会教育行政を推進。社会教育は全体主義的な国民国家の教化および質のいい労働者の育成を目指した「上(国家)からの要請」と一般大衆が教育機会を求める「下からの要求」の混在した公的な教育的営為として成立した。

■上からの要請・・・伝統的な若者組を地域青年団に、婦人に対して婦人会の組織化を図るなど「動員」という形での社会教育
■下からの要求・・・大正期まで徹底して抑圧を受ける

大正デモクラシー  労働学校、農民学校が各地に生まれる。これにも「治安維持法」などの抑圧が加えられたが、政府は青年団天幕講習会や成人教育講座など大衆の興味を引こうとする新たな試みも始めた。しかし、社会教育の理念は、あくまでも国民教化にあったのであり、その後、農村恐慌下の自力更生運動と戦時下での大政翼賛会の成立によって、社会教育は全国民を巻き込んだ国家主義による一大教化運動として体系化されていった。

5、戦後社会教育の復興と変質

1946年 公民館設置運営要領
民主主義を我が物とし、豊かな教養を身につけ、郷土の生活を豊かにする施設として公民館が規定される

今まで教化されてきた国民に、今度は民主主義をうえつけるための社会教育の場として、公民館が中核をなすように期待された。

1949年 社会教育法の成立
社会教育を「学校で行われる教育活動を除き、主として青少年および成人に対して行われる組織的な教育活動」と定義する。
1950年代後半  青年や婦人のグループ学習活動、労働者のサークル活動、母親運動、市民運動が盛んになる
1959年  社会教育法の大幅な改正
これにより補助金による団体指導と行政指導の強化を試みたが、そのことが活動の選別に繋がり、本来自由であるべき学習活動への官僚支配だと批判を浴びる。また公害などで住民運動が盛り上がった。高校全員入学運動や親子映画会など、地域の父母や教師を巻き込んで教育文化活動が高まりを見せたのも、高度経済成長期を通じてのことである。

■公民館活動
教育の機能を果たすというより、農村の会所として伝統的に存在した公民館ではあるが、大都市には大規模な公民館が建設されていったのに対し、農村部の公民館活動は衰退の一途をたどった。

1980年~90年代  市民文化論や生涯学習民営化論などの影響もあって、戦後40年にわたって継続されてきた社会教育行政が、生涯学習社会への移行と言う大きな転換を余儀なくされた。

1988年  生涯学習振興法設立
それまで教育委員会の専権領域であった社会教育の領域に、知事や市町村長が参加してくることを促した。これにより以前の社会教育行政が再建される動きがある。

■生涯学習振興法
民間事業者の協力を生涯学習の振興に積極的に認めているが、民間の成人教育事業が着実にマーケットを拡大してきたという現実を、遅くらばせながら追認したということである。いずれにせよコミュニティーセンターが主要駅前に設置されるなど民間活力の比重を一段と高めた生涯学習活動が展開され始めている。各地で「公民館VSコミセン」と言われる対抗関係が生じているのはそういう背景があるからである。

6、現代の社会教育ー終焉か変貌かー

松山圭一「社会教育の終焉」(1986年)
社会教育行政は国民の市民性の未熟さのうえにのみ成り立つにすぎないので、市民の文化水準が行政のそれを超えている今は、社会教育は必然的に終焉すべきである


トーマスの論理
①市場原理のもとでは、一定水準以上の経済状況にある人々だけしか学習機会を十分に享受できない
②健全な農村社会を維持することは、利潤を生む民間企業には不可能である
③社会的マイノリティに対する配慮をなし得ない
④民営企業は教育に関する専門スタッフを抱えにくい

現在の「生涯教育振興法体制」は社会教育終焉論や民営化論と社会教育擁護論をの折衷的な構造を持っている。今後は多様な学習要求に多様な行政、多様な機関というあり方がもっとも現実的であり、社会教育行政のような包括的な行政への回帰はありえない

第6章 学校と社会の連携

1、学校と社会のかかわり
近年の学校教育は声域の中で子供たちを社会化していく機関として確立された。少なくとも、そのように学校と社会を明確に区分することに大きなメリットがあった。それによって、フロントエンドタイプの学校体系が確立されてきた。

戦後すぐ「地域社会学校」という実践があった。それはアメリカのオルセンの「コミュニティ・スクール」の強い影響下の元で行われた。

■コミュニティ・スクールの5つの構想
①成人教育センターとしての機能を持つ
②地域の教育資源を利用する
③地域の課題を教育課題の中に位置づける
④地域の活動に参加し社会を発展させる
⑤地域の教育活動の発展に指導的役割を果たす

高度経済成長で、コミュニティー運動それ自体は解体してしまったが、その後の学社連携理念に強い影響を与えている

2、理念としての学社連携

■1971年 中教審の46答申
それまでの家庭教育・学校教育・社会教育があたかも年齢区分のように考えられがちであったことを指摘。同じ指摘が社会教育審議会答申でも出される。

この2つの答申のため、学社連携の場合の連携主体は「学校と社会」ではなく「学校教育と社会教育」という狭い範囲にとどまることになった。つまり、学社連携の出発点は学習要求ではなく政策レベルにあったということである。

■1986年 臨教審第二次答申
はじめて「連携」の概念が登場する。
「学校開放」・・・学校が地域住民を迎え入れる場合と学校が地域へ出て行く場合の2通り

■学社連携の背景
①青少年の問題状況:都市化・核家族化・少子化・情報化・進学率の上昇などで、青少年の精神的自立の遅れや社会性や連携の欠如が見られた
②学校教育のスリム化:学校教育への過度の期待を反省
③生涯学習社会形成のプロセス:生涯学習社会を実現するには、学校教育と社会教育の協力が必要

しかし現実には学社連携が十分に進展したとは言いがたい。

3、連携から融合へ
1995年 「国立青年の家・少年自然の家の改善について」

これからの生涯学習社会においては、学校と学校外の教育がそれぞれの役割を分担した上で連携を図っていくことだけでなく、それ以上に、相互がオーバーラップしつつ、融合した形で行われていくことが大切である


4、地域に開かれた学校
・生涯学習の立場から・・・学校の積極的な利用によって地域の生涯学習機会を充実させる
・学校教育の立場から・・・地域の物・人文化を利用することで学校教育の活性化を図る

■生涯学習審議会答申
①大学における社会人学習者の受け入れ促進、公開講座の充実
②小・中・高の施設を開放し、学校教育の内容を地域に根ざしたものにすることとともに、「学校支援ボランティア」の導入により、学校と地域を結びつきを強める

■中教審答申
①いじめ・登校拒否・若年層の自殺などの問題を背景に、ゆとりを持って生きる力を育てる
②学校を社会に対して開かれた学校としていくこと
③学校が家庭や地域社会と共同して子供を育てていく
これがゆとり教育の明確な出発点のひとつである。

5、学社連携・融合と生涯学習
このような各地でのさまざまな取り組みであるが、残念ながら生涯学習側への効果は未だ大きなものとはなっていない。また、子供たちも学年進行とともに子供たち自身が忙しくなって地域の成人支援者との活動に消極的なることや、学校を地域に開放することへの学校側の抵抗感が未だに大きい。しかし、現在はようやくその一歩を踏み出したといえる。

第7章 大学と生涯学習

1、大学の社会貢献機能
狭義の生涯学習は、内容的にはそれほど高度でも専門的でもなく、特定の職業にかかわることが少ないといった性格を持っている。一方、大学は専門的で高度な、特定の職業や資格に結びつくような教育・訓練を提供する場であると認識されてきた。確かに大学の使命は、第一に研究・第二に教育・第三に公共へのサービスであるが、公共へのサービス(社会貢献)機能は軽視され続けてきた。

■大学教員を採用する場合や内部昇進の例
教員の審査をする場合は、著書や論文の数・質のような「研究実績」であり、社会貢献が重要な要素とされることはまったくない。それどころか、教授会を欠席して社会活動をする態度が嫌われたり、マスコミに顔を出す行為が非難の対象になったりする。その傾向は最近になっても変化が見られない。確かに社会人が大学と職場を行き来する「往復型社会」の提言はあるが、具体性に乏しい。

2、大学と生涯学習市場
しかし、今日の大学のおかれている状況は極めて厳しい。2007年には大学全入時代を向かえただけでなく、2005年には私学の3割・短大の4割が定員割れを起こしている。奇しくも同じ時期に団塊の世代の定年が始まる。これにより、減少した18~22歳層に代わる成人顧客層からなる生涯学習市場に、これまでになく大学の関心が集まっている。

3、大学開放の状況
公開講座や社会人学生の受け入れは、すでに1970年代から先進的な大学で実施されてきた。しかし、受講者は伸びているものの、1講座の受講者は著しく減少している。つまり、講座の数によって受講者の増加がもたらされていると言うことである。

■原因
①地域の学習者のニーズが適切に把握されていない
②これまで大きな受講者層を形成してきた「リピーター層」の高齢化
③講座運営の適切性と柔軟性の不足
現在の大学での公開講座を支えているのは、ローテーションで担当となった職員と、ほとんと無収入に近い講義を担当する教員である。

4、大学開放の新たな動向
大学における学問的蓄積・人材・施設設備・学習機会を、入学してきた学生だけでなく社会人にも提供しようという活動が大学開放である。

■2000年 大学の構造改革プラン(遠山プラン)
「社会人キャリアアップ100万人計画」
・大学・大学院への受け入れを2006年までに100万人規模にする
・ITを使った遠隔教育や短期集中コースにより、社会人が学びやすい環境を整える

それに伴い、大学側はエクステンションセンターや生涯学習センターなどの充実を図り、受講生側もリストラなどの雇用慣行の衰退などから専門的な資格を求める動きが急増している。

■質的な変化
①「多様化」・・・学習者の関心の広がりに応じて内容が多岐にわたる
②「高度化」・・・学習者の高学歴や職業技能が複雑化したことによる
③「活性化」・・・受動的な学習者から能動的な学習者への変化

5、都市型私大における大学開放への取り組み
明治大学「リバティ・アカデミー」

■基本的使命(ミッション)1「大学の開放」
①全学部および大学院による専門的教養を提供する公開講座
②教材作成にかかわる調査研究活動
③安全工学などの萌芽的な学問分野の講座
④MOT、CIOなど実学に近隣した分野の講座
⑤英大学の遠隔講義やeラーニングによる講座の配信

■基本的使命(ミッション)2「生涯学習の推進」
①都心立地を活用したビジネスパーソン向けの公開講座
②就・転職を視野に入れた資格や語学関係の公開講座
③企業や官公庁からの研修の受託
④地域活性化に関して地域と協同して行う事業
⑤ハローワークからの委託を受けて行う再就職訓練
⑥司書講習などの専門的な職業資格を取得するための講座
最近では「社会との連携」をキーワードに、産業社会や地域社会との連携も積極的に図られている。当初は60歳以上が約半数を占めていたが、現在では20代・30代(特に女性)の伸びが著しい。

6、大学と生涯教育の今後
大学という非常に豊かな知的蓄積の場から、より大きなものを得ようとする学習者が増えたことが背景にあるが、それ以上に大学側が新しい運営・環境に対応する必要性を痛感し、これまでにない戦略をとり進めていることは重要である。

第8章 余暇と生涯スポーツ

1、労働時間と余暇時間のパラドックス
2004年の調査では、月以上の労働時間は減少している。これは余暇時間が増えているとみなしても構わない。しかし、なぜか余暇時間が減少したと感じている人が増加の傾向がある。これはなぜか。つまり、自分が余暇時間だと思う時間の増減を聞いているのであって、労働時間以外の余剰の時間がそのまま余暇時間と意識されるわけではないことを意味している。

2、余暇の意味と起源
余暇とは、拘束を解かれて自由に費やすことの出来る時間を言う。しかし、余暇はただ空いている時間とというのではなく、何らかの意識的な活動をして初めて「余暇」と意識される側面を持つ。

そもそも人間はなぜ余暇に活動するのか。人間以外にはそれはない。
■デュマズディエの余暇活動の基本的意味
①休息・・・労働力の再生産
②気晴らし・・・余剰時間分の過剰な意欲(闘争心・競争心・性欲など)の発散。大衆的な娯楽やスポーツはこのような背景による。
③自己啓発・・・自己啓発は自己実現にも関連する、達成感を目指す活動である
余暇を存続させている社会的な要因、動機には、そのほかに、非労働型文化または遊びとしての継承ということもある。

3、余暇活動の内容
①スポーツ部門
②趣味・創作部門:園芸・芸術鑑賞・各種学習など(一般的な生涯学習活動はこの範疇に入る)
③娯楽部門:カラオケ・パチンコ・バーなど、大衆娯楽に関する活動
④観光・行楽部門

4、余暇と生涯スポーツ
日本のスポーツは基本的に外来の活動であり、欧米諸国では地域共同活動に属するスポーツクラブを中心に発展してきたのに対して、学校や職場を通じて普及した伝統がある。

現代では、スポーツはストレス解消や活力のはけ口ではなく、芸術鑑賞やゲームの参加に似たものがあり、それは日本人がスポーツに関して、「する層」と「見る層」とに完全に分離されなくなったことと深い関わりがある。

最近は参加型スポーツを楽しむ傾向が強まっており、特に女性の参加が目覚しい。人生の第三期(定年後・子育て後)の延長と生活時間の余裕、多少の経済的ゆとり、健康志向の風潮などが、「する層」と「見る層」の分離という傾向を持っていたわが国のスポーツ状況に変化が生じはじめた。しかし、国際的視点から見ると、まだまだわが国のスポーツ実施の質的な側面は低い水準にある。

ラングランの生涯教育の理念には、重要な内容としてスポーツ活動が含まれていた。そうしたことから生涯学習において、学習とスポーツを別個のものだと考える必要も妥当性もない。

5、生涯スポーツ政策と直面する諸問題
1961年 東京オリンピック開催に基づき「スポーツ振興法」発布
しかし財政難を理由に40年以上も棚上げ
2001年 スポーツ振興投票(サッカーくじ)の収益が見込まれたため、具体的な施策が出来る

■「スポーツ振興基本計画」
2000年までに成人の週1回のスポーツ実施率を50%異常にすること
2010年までに全国の市町村に「総合地域スポーツクラブ」を1つ以上育成すること

■問題点
学習活動とは違い、施設設備(体育館・運動場・プール)が必要とされる。民間では当然のことながら使用目的がはっきりしていて利用者が特定の集団に限られる。

■理由
①公共社会体育施設が人々のニーズに対して適切なサービスを提供できていない。なぜなら、国土交通省や厚生労働省がいくつもの省庁や、地方自治体が施設整備という側面から関与していることなどで、それぞれのスポーツ振興法を薦めているという統一性のなさがあるからである。そのため一貫した長期的なスポーツ振興策がたてにくい。

②生涯スポーツ指導者の質と数の不足

第9章 行政による生涯学習支援

1、生涯学習を推進する行政の理念
臨教審第二次答申(1986):生涯学習社会への移行の章がたてられ、その中で、学校中心・学歴偏重の考え方を改め、どこでもいつでも学べる機会の多様な学習機会ののせ揖斐が強く具申された。

しかし、そのように「行政主事」で生涯学習化が進展するのは、少し奇異に感じられる。なぜなら、もし多くの人々が生涯学習の機会を必要とするならば、社会の中で需要が生じ、ビジネスチャンスが生まれて市場が形成されるからである。もちろん市場が形成され発展してきたことは否定は出来ない。
・資格や就職に結びつくもの・・・英会話・調理・簿記・着付けなど
・それ以外のもの・・・ダンス・陶芸・俳句・園芸など
このように、すべての生涯学習が金銭に結びつくとは言いがたい。従って、ある種の生涯学習には行政の援助が不可欠となる。

■生涯学習に関する基盤整備及び支援のための事業
①教育制度全体を生涯学習システムに組み替えていくこと(弊害を抱える学校教育制度を改革する契機となる)
②科学技術の新しい進歩、情報化、国際化といった社会に対応するための成人の新しい学習意欲に対応する
③生きがい作りや自己実現が可能となるような学習機会の充実の要求に応ええる。
④生涯学習を核に、ネットワークを作ったりすることで、社会集団の連携を強める

2、生涯学習システムの基本構造
画像

3、国の施策と生涯学習支援体制
■1988年 文部省「生涯学習局」を設置
①生涯学習推進体制の整備(有給休暇の整備、労働時間の短縮、生涯学習推進会議、センターの設置)
②学習情報提供あるいは相談体制の整備
③各種生涯学習施設のネットワーク化
④学習ニーズの高度化・多様化に応じた文教施設の高品質化と有機的活用

■1989年 中教審答申「生涯学習法」
①生涯学習振興の都道府県の議場としての位置づけと文部省の基準設定
②都道府県による基本構想の策定
③都道府県生涯学習審議会の設置
④市町村における生涯学習振興のための連携協力体制の整備

■これらの影響
①生涯学習振興が都道府県の事業になったため、首長部局の役割が格段に重要になった
②公的機関だけが行ってきた従来の社会教育と異なり、多様で自由ではあるが私事化の進んだ生涯学習のコンセプトが明確に打ち出されるようになった

4、生涯学習支援と国の財政
財政面では圧倒的に地方自治体の負担が大きい。
■予算の使途
①生涯学習錐sん事業
②学習状況提供システム整備事業
③各種フェスティバルの開催
④社会教育指導者の育成と確保
⑤学習機会の提供
⑥公立社会教育設備の整備
⑦放送大学の振興
⑧専修学校の充実
⑨地域活動の振興
⑩高齢者教育の推進
ただし、近年は在籍気の影響を受け、社会教育費の比率は下降気味である

5、地方自治体の生涯学習推進体制
実際の生涯教育に携わるのは、国ではなく地方自治体(市町村)である。しかし、地方自治体では、先述のように、知事や市町村長直属の首長と教育委員会による二重構造が問題となってきた。

教育委員会では、公民館や図書館などを運営し、それらの施設における講演会や学習会を総括しており、これらは戦前から続くものもある。それらに関わることが社会教育を主管する部慮と主事のアイデンティティを支えてきた。

しかし1970年代になると、カルチャービジネスが台頭し、公民館での成人講座よりも魅力的で聴衆を集めるカルチャーセンターのコースが登場したり、制約の多い公民館に対抗する形で、主長局部主管のコミュニティセンターが設立されたりして、教育委員会のアイデンティティの危機さえ指摘されている。

学習活動の支援に関しては、教育委員会も首長部局も同じ程度の関与をしている。しかし、実際に生涯教育行政に携わっている立場からは、もっと教育委員会が主管すべきだと言う声も多い。

6、生涯学習ネットワーク
膨大な予算を使って新たに施設・設備を設けなくとも、既存の施設・設備相互間のネットワークを、人的・物的に、そして情報に関して構築することにより、所期の目的を達成することは十分に可能である。

■例
・図書館・博物館などのソフトとノウハウを有する施設が、郵便局や駅といった公共の場を利用して文化事業や情報提供、図書の貸し出し業務を行う
・大学の公開講座を地域の公民館で受けることが出来る
・プールや体育館など、学校の施設を使った社会教育活動を企画する
・企業内学習活動への講師派遣及び地域の学習活動への企業からの人材派遣を行う
・博物館・美術館の活動に協力できるような地域のボランティアを組織的に要請し活用する

第10章 生涯学習市場の展開

1、余暇活動の中の学習活動

睡眠や食事などの一次活動、仕事や家事などの二次活動に費やす時間を除いた三次活動の時間に行う成人の学習活動には「自分への投資」という側面がある。しかし、何か目的を持ってまとまった学習をしようとすると、授業料や教材費など負担しなければならない。

■総務省統計局の「時間のすごし方」(1996と2001)
商業実務・ビジネス関係、外国語、芸術・文化、家政・家事の分野での学習者が増えている。ビジネス関係では男性が多く、家政関係は女性の割合が多いが、若年層では差がない。

2、学習行動と潜在意識

■経験したことのある学習行動
男性「本、TV、ネット、ビデオ」・・・あまりお金がかからない
女性「民間の講座や教室で学ぶ」「個人の先生につく」・・・費用がかかる
「行政が行う講座で学ぶ」は同程度
しかし、予算縮小などか絡み、行政の講座が今後住民のニーズに応えるには限界がある。

3、市場としての生涯学習

実際行った学習方法とやってみたい学習歩方の差があるため、今後も生涯学習市場が成長する余地はある。企業内教育市場やeラーニング市場を考え合わせると、広い意味での生涯学習市場は1~2兆円の潜在規模を持っている。

4、近年の学習市場の動向
教育にも「不易と流行」はある。
不易・・・いつの時代も変わらない普遍的なもの
流行・・・時代と共に大きく変化する部分
どちらかというと、生涯学習は流行の部分が大きい。

■ケイコとまなぶの例
英会話やパソコン関係、簿記などは、常に人気の上位にあるが、近年は「癒し系」(アロマセラピー、リフレクソロジーなど)のジャンルが伸びてきている。また、高齢社会を迎え、需要が高く将来性もある福祉関係の資格取得講座も人気がある。つまり、資格やビジネスチャンスに直接関わるような学習機会の伸びが著しい。

読者は20代~30代の女性がほとんどで、「仕事に生かす・資格を取る」と「趣味をもつ・教養をつける」が半々である。しかし、「転職に役立てたい」と言う人が9割いるのも特徴のひとつである。

キャリアアップには教育訓練給付制度が使えるが、雇用保険加入3年以上から支給対象なので、ニートや30代のフリーターが制度の恩恵を受けることは難しい実情である。

5、生涯教育市場の展望
団塊の世代が多数退職する「2007年問題」もあり、予想される潜在規模はこれまでになく大きい。団塊の世代の一部が退職後、積極的に学習を指向することは十分に考えられる事態である。

主に女性の場合は、従来の難関な公的資格ではなく、ファッションやペットなどの民間資格(プチ資格)への需要が静かなブームになっている。職業や雇用に直接繋がるものではないが、身に着けることで事故充実感を高める効果もある。

生涯学習は、これまで短期間の対面指導や郵便通信が多く用いられてきたが、現在では情報通信技術の発達により、学習方法の高度化、多様化が急速に進んでいる。

■ユーキャン(元日本通信教育連盟)の諸改革
①事業部制の廃止:書道なら「日本書道協会」、手芸なら「日本手芸センター」という独立した事業部を廃止し、すべて日通連の統一事業の一環とした
②ブランドの統一:日通連の名称をユーキャンに変更。これにより「生涯学習のユーキャン」としてのブランドを確立する
③教育改善の推進:教材改善委員会を設置し、クオリティの向上を図る
④教育方法の多様化:eラーニングやスクーリングの実施(しかし主要な指導は従来どおり通信におく)

プロフィール

Mikami Kako

Author:Mikami Kako

おことわり

保育士・図書館司書に関しては、旧システムによるものなので、現在のもの科目編成や内容にずれがあります。放大についても閉講科目が含まれます

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