第1章 子供観と児童福祉の歩み

1、子供観の変遷

1、児童憲章における子供観
「児童憲章」(1951年)
児童は、人として尊ばれる
児童は、社会の一員として重んぜられる
児童は、よい環境の中で育てられる


2、ヨーロッパにおける子供観の変遷
・中世まで・・・親や社会の所有物としての子供
・近代社会・・・子供が子供らしい状態に有ることが望ましい
・現代社会・・・権利の主体としての子供

2、日本の児童福祉の歩み

1、古代から近世までの児童救済
593年、聖徳太子が天王寺に孤児・棄児の保護施設「悲田院」を開設

2、近代における児童救済
明治時代の富国強兵政策の元、1871年(明治4年)「棄児養育米給与方」を施行、1874年(明治7年)「じゃっきゅう規則」(身寄りがなく高齢・疾病・障害などで仕事に就けない極貧の人々に米を支給する制度)あくまで援助は家庭内および近隣や共同体による相互扶助が基本

・1887年、石井十次・・・岡山孤児院
・1891年 石井亮一・・・滝乃川学園(知的障害児施設)
・1899年 留岡幸助・・・家庭学校(のちの児童自立支援施設)
高木憲次・・・身体に欠陥があるのではなく、身体が不自由なだけであると提唱

3、大正のデモクラシーと昭和大恐慌時代の児童救済
1929年(昭和4年)「じゃっきゅう規則」に代わる公的扶助法である「救護法」を制定し、1932年(昭和7年)施行
・困窮妊産婦に分娩の前後4週間、生活・医療・助産・生活扶助を与える
・13歳以下の困窮児童に生活・医療扶助を与える
・保育場必要ありと認められる1歳未満の乳児を持つ困窮する母子に対して母子救護を行う

4、児童保護対策から戦後の児童福祉へ
1946年 日本国憲法公布
1947年 児童福祉法・・・従来の「少年救護法」「児童虐待防止法」を吸収してひとつにまとめた
1985年 児童福祉法改正・・・高度経済成長の流れを受ける
1997年 児童福祉法改正・・・施設福祉から在宅福祉への転換を柱とする

3、児童福祉の理念
■日本国憲法 第25条
すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
国は、全ての生活部面において、社会福祉・社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努められなければならない

1、児童福祉法による児童福祉の理念
■第1条
全ての国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、かつ、育成されるよう努めなければならない
全ての児童はは、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない
■第2条
国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う
■第3条
前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行に当たって、常に尊重されなければならない

2、その他の児童福祉の理念

1)児童憲章 1951年5月5日
われらは、日本国憲法の精神に従い、児童に対する正しい観念を確立し、全ての児童の幸福をはかるために、この憲章を定める
児童は、人として尊ばれる
児童は、社会の一員として重んじられる
児童は、よい環境のなかで育てられる

2)児童権利宣言 1959年 国連採択
人類は児童に対し、最善のものを与える義務を負う(前文)

3)児童の権利に関する条約 1989年 国連採択
子供の権利の包括的保障を実現するために
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第2章 児童福祉の対象と現代的課題

1、児童福祉の対象

1、児童福祉の対象
・乳児・・・満1歳に満たないもの
・幼児・・・満1歳から小学校就学の始期に達するまでのもの
・児童・・・小学校就学の始期から満18歳に達するまでのもの
<注意>
母子寡婦福祉法では満20歳に満たないものを児童とし、少年法では20歳に満たないものを少年とし、民法では満20歳に満たないものを未成年という。

2、児童福祉の対象としての妊産婦
妊娠中または出産後1年以内の女子

3、児童福祉の対象としての子供の種類
・家庭内環境に問題を抱える子供
・心身の機能障害を抱える子供
・情緒・行動上の問題を抱える子供

2、現代の子供を取り巻く環境

1、社会環境の変化
1)都市型・過疎化の進行
1960年代以降の高度経済成長期に産業の中心が第1次産業(農・林・漁業)から第二次産業(製造・工業)に、そして第三次産業(サービス業)に移行するのに伴い、都市への人口流出は各地に過疎地域の増加をもたらした。都市・村落両方の地域において、子供の遊び仲間は減りつつあり、仲間集団が形成しにくくなっている。

2)出生率の低下(原因)
・晩婚化・晩産化
・未婚・非婚の割合が増えている
・子育ては経済的・精神的・肉体的な負担が大きい
・仕事との両立が困難である
そのため政府は2003年(平成5年)少子化対策基本法を制定した。

2、地域環境の変化
子供の健全な成長にとって障害となる地域の問題
■物質面・・・大気汚染・水質汚濁などの公害、交通事故、子供が安全に遊べるところが少ない
■社会面・・・大人同士の交流が少なくなり、子育ての情報交換をする場が少ないので、一人で悩む親が増えている→大人が交流しないので子供も付き合いがなくなる
■文化面・・・伝統的な遊びがすたれてきている。地域の子供と触れ合う機会が減少し、戸外での集団遊びより少人数でゲームなどをする室内遊びが主流になりつつある

3、家庭環境の変化
1)育児・子育ての不安
核家族化により、個人のプライバシーが尊重されるようになった一方で、親しい隣人や相談相手を得られずに心理的に孤立し、子育てに不安を感じている親が増えている。
また、伝統的な価値観が廃れていく中で、子供に関する従来の範疇が揺らぎ、混乱に陥っている親も多くなっている

2)仕事を持つ母親の増加

4、家庭の養育能力の低下
保育所に子育て支援センターとしての機能を持たせ、家庭での子育てを側面から支援する取り組みがはじまった

5、児童虐待への対応
児童虐待の防止等に関する法律「児童虐待防止法」
■児童の虐待を
・身体的暴行
・わいせつな行為
・食事を与えない・長時間の放置その他監護を著しく怠ること
・著しい心理的外傷を与える言動
と定義。
■児童の福祉に職務上関係の有るものは、早期発見に努めなければならない。発見した場合は通告義務が生じる
■児童相談所長また施設長は一時保護がとられた場合、親の面会や通信の制限を行うことが出来る
■都道府県知事は虐待の恐れのある場合は、児童委員または児童関係職員を住居に立ち入り調査させることが出来る
■立ち入り調査を行えるものは、職務上必要であれば警察署長の援助を求めることが出来る

第3章 児童福祉に関する法律

1、児童福祉法

1、法の概要
1、児童福祉保障の原理
2、定義
・児童など・・・児童・妊産婦・保護者及びそれらの定義
・里親
・児童福祉施設など
3、児童福祉審議会など
4、実施機関
5、児童福祉司及び児童委員
6、保育士
7、福祉の保障
8、事業及び施設
9、費用の負担についての規定・・・国・都道府県・市町村における費用負担の割合
10、雑則・・・大都市の特例、未認可施設への立ち入り調査・業務停止命令など
11、罰則

なお、児童福祉法を円滑に実施するために定められた3つの法令
1)児童福祉法施行令・・・福祉の保障のうち「医療・療育・保育・里親・児童福祉施設・保育士試験」についての実施基準を法令により定める
2)児童福祉法施行規則・・・児童福祉司・児童相談所・医療・療育・児童福祉施設・保育脂溶性施設・保育士試験の実施要綱を厚生労働省令で定める
3)児童福祉施設最低基準・・・施設の基準・職員・療育・養護・保育の内容・保護者・関係機関との連絡について最低基準を示す

2、1997年(平成9年)の改正
■名称変更
・母子寮→母子生活支援施設
・養護施設→児童養護施設
・教護院→児童自立支援施設
■新設
・児童家庭支援センター
■廃止
・虚弱児施設

■保育所の入所が措置から選択へ
市町村の措置により保育所の入所が決定されていたが、保護者の希望を反映する、利用選択が可能となる。
■保育量が応能負担から応益負担へ
保護者の収入に応じて保育料が決定されるシステムから、同じ保育サービスを受けた場合、同じ保育料を負担するシステムに転換する
■放課後児童健全育成事業
■児童自立支援施設の入所対象
不良行為をなし、またなす恐れの有る児童に加え、家庭環境その他の環境上の理由により生活指導を要する児童にも拡大される
■子育て支援
・保育所における子育て相談の実施
・児童相談所の機能強化
・児童家庭支援センターの創設
■母子生活支援施設
自立の促進・雇用の促進を図る

3、2001年(平成13年)の改正
■保育士資格の国家資格化
任用資格(資格を保持するだけでは資格として認められず、職務に採用されてはじめて資格として生かされるもの)から国家資格に移行し、名称独占資格(保育士の資格を持たないものは保育士を名乗れない)に改められる。

4、2004年(平成16年)の改正
■乳児院および児童養護施設の入所年齢の見直し
状況に応じて乳児院に児童も、また児童養護施設に乳児も入所できるようになる
■児童福祉施設および児童自立生活援助事業の業務内容の追加
■里親の権限の明確化
■保護受託制度の廃止
義務教育が終了した要保護児童を自宅に預かり、または自分の所に通わせて保護する制度が廃止された
■児童福祉に関する体制の充実
■要保護児童に対する家庭裁判所の関与の見直し
■小児慢性特定疾患治療研究事業の法定化

2、児童福祉六法(児童福祉法以外の児童福祉六法と呼ばれる法律)

1、児童手当法
児童を養育しているものに児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健全な育成及び資質の向上に資すること(所得制限あり)
三歳~小学校6年生まで

2、児童扶養手当法
父と生計を同じくしていない児童が養育されるか艇の生活の安定と自立の促進に寄与することを目的とする
■支給条件
・父母が婚姻を解消した児童
・父が死亡した児童
・父が政令で定める程度の障害の状態にある児童
・父の生死が明らかでない児童
・その他支給条件に準ずる児童
この場合の児童は「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるもの、または20歳未満で法令で定める程度の障害の状態に有るもの
三分の一を国、三分の二を都道府県が負担

3、特別児童扶養手当等の支給に関する法律
■特別児童扶養手当・・・20歳未満の障害児の父もしくは母がその障害児を監護するとき、または父母以外のものが養育するとき、特別児童扶養手当を支給する
■障害児福祉手当・・・十度障害児に対する手当て
■特別障害児手当・・・特別障害者(20歳以上で重度の障害状態にあり、常時特別の介護を必要とするもの

4、母子及び寡婦福祉法
■母子福祉資金の貸付
■売店などの設置の許可
■公営住宅の供給に関する特別の配慮
■保育所の入所に関する特別の配慮
■雇用の促進

5、母子保健法
一歳六ヶ月健康診断の法制化

3、その他の法律(児童福祉六法以外の児童福祉に関わる法律)
1、生活保護法・・低所得者に分娩費・出産手当金・育児手当金
2、児童買春、児童ポルノに係る行為などの処罰及び児童の保護などに関する法律(児童買春禁止法)
3、配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律(配偶者暴力防止法)

第4章 福祉施設の機関と施設

1、児童福祉に関わる行政及び審査機関

1、行政組織
国・・・厚生労働省
地方公共団体・・・都道府県・特別区(東京23区)・市町村
政令指定都市は都道府県と同じ権限を持つ
中核市(人口が30万以上・面積が100平方キロメートル以上)

2、審議機関(児童福祉審議会)・・・合議制の機関
都道府県には設置義務が有る。市町村は任意。
・行政の諮問機関
・文化財の推薦・勧告

2、児童福祉の実施機関
1、市町村
・児童及び妊産婦の福祉に関し、必要な実情の把握に努めること
・児童及び妊産婦の福祉に関し、必要な情報の提供を行うこと
・児童及び妊産婦の福祉に関し、相談に応じ、調査・指導を行うこと並びに付随する業務を行うこと

2、都道府県
・各市町村の区域を越えた公益的な見地から、実情の把握に努めること
・相談のうち、専門的な知識及び技術を必要なものに応ずること
・必要な調査及び医学的・心理学的・教育学的・社会学的・及び精神保健上の判定を行うこと
・必要な指導を行うこと
・児童の一時保護を行うこと

3、児童相談所
都道府県・政令指定都市には設置が義務づけられている
■児童相談所の措置手引き
・児童福祉司の指導や児童福祉施設への入所処置について、児童相談所所長は、都道府県における措置を必要と認めるときには、都道府県知事への報告書の記載事項に、家庭環境ならびに措置について子供と保護者の意向を記載するものとする。
・措置に関する児童福祉審議会への意見聴取
施設入所の措置の決定及び解除を行うときは、都道府県児童福祉審議会に意見を聞かなければならない

1)職員・・・所長・児童福祉司・心理判定員・医師・児童指導員
2)児童福祉に関する業務(相談)
・家庭からの相談
・地域住民や関係機関からの通告、福祉事務所や家庭裁判所からの送致
・相談・・・養護・障害・非行・育成
■調査・診断・判定
■指導
■措置など
■一時保護・・・原則として子供及び保護者の同意で行う

4、福祉事務所
生活保護・身体障害者福祉・知的障害者福祉・母子及び寡婦福祉・高齢者福祉の業務を行う
1)設置の基準
都道府県と指定都市、市、特別区は設置義務がある。町村は条例を定めた上で設置
2)職員・・所長・職員・査察指導員・社会福祉主事・身体障害者福祉司・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事
3)業務
・子供及び妊産婦の福祉に関して、必要な実情の把握を行う
・子供及び妊産婦の福祉に関する事項について相談に応じ、必要な調査・指導を行う
■福祉事務所長の措置
・専門的判定や児童養護施設の入所措置を要するとみちめられる時は「児童相談所」に送致すること
・要保護児童または保護者を福祉事務所の知的障害者福祉司または社会福祉主事に指導させること
・母子生活支援施設、助産施設への入所が適当と認められる事例について、母子保護や助産の実施機関である都道府県知事・市町村の長に報告・通知すること
・保育を必要とする児童がいたときは、保育の実施機関である市町村の長に報告または通知すること

5、家庭児童相談室
福祉事務所に設置され、社会福祉主事と非常勤の家庭相談員による指導を行う

6、保育所
・児童の保健について、正しい衛生知識の普及を図る
・健康診断や健康診査を実施し、必要に応じて保健指導を行う
・身体に障害の有る児童・疾病により長期療養を要する児童に療育指導を行う
・児童福祉施設に対し、栄養の改善その他衛星に関し、必要な助言を行う

7、児童福祉施設

■助産施設・・・保健上必要であるにも関わらず、経済的理由により入院助産を受けることの出来ない妊産婦を入所させて、助産を受けさせる施設
・第一種助産施設・・・医療法の病院で医師が管理する
・第二種助産施設・・・医療法の病院で助産院が管理する

■乳児院・・・家庭での療育が困難な乳幼児を養育する施設
■母子生活支援施設・・・配偶者のいない女子の監護すべき児童を入所させて自立の促進を図る
■保育所・・・保護者の委託を受けて、保育に欠ける乳児または幼児を保育する事を目的とする施設で、子育て支援の活動の拠点となる
■児童更正施設・・・児童遊園・児童館など児童に健全な遊びを与え、その健康を増進し、情操を豊かにすることを目的とする施設
■児童養護施設・・・保護者のいない児童・虐待されている児童で満18歳に満たない子供を養護し、退所した子供も含めて自立を援助する施設
■知的障害者施設
■知的障害者通園施設
■肢体不自由児施設・・・上肢または下肢または大幹(頭と上肢・下肢を除いた部分)の機能障害の有る児童を治癒するとともに、独立自活に必要な技能を与えることを目的とする施設
■重症心身障害児施設・・・重度の知的障害及び肢体不自由が重複している児童を入所させて、これを保護するとともに、治癒及び日常生活の指導をする施設。おおむね三歳以上
■情緒障害児短期治療施設・・・軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所・または保護者の下から通園させ、情緒障害を治し、退所した後も相談に応じる施設
■児童自立支援施設・・・不良行為をなし、またはなす恐れの有る児童、及び環境上の理由より生活指導を要する児童を入所させ、または保護者の下から通所させ、自立を支援し、退所したあとも相談や援助を行う施設
■児童家庭支援センター・・・家庭・地域住民その他からの相談に応じ、必要な助言を行い、保護者に対する指導を行い、合わせて児童相談所・地域福祉施設と連絡調整を総合的に行う施設。児童養護施設などの児童福祉施設に附属されている

第5章 子育てを支援する取り組み

1.地域社会と家庭の変化への対応

1、子供と家庭を取り巻く環境の変化
<出生率の低下への背景>
家庭や地域における子育て機能の低下、女性の社会進出に伴う、育児と就労を両立させることへの困難、育児・子育てに対する心理的・身体的な負担増、住宅事情の問題、保育・教育費など子育てコスト増などの問題が指摘されている。

2、子育て支援社会の構築に向けて
■1994年(平成6年)エンゼルプラン
・子育てと仕事の両立支援
・家庭における子育て支援
・子育てのための住宅及び生活環境の整備
・ゆとりある教育の実現と健全育成
・子育てコストの軽減

■緊急保育対策等5ヵ年事業
エンゼルプランの施策を具体化するために作成される
・低年齢児保育の促進
・延長保育
・一時保育
・乳幼児健康支援ディサービス事業
・放課後児童クラブ
・多機能化保育所の整備
・保育所の人的配置の充実
・保育料の軽減
・地域子育て支援センター
・母子保健医療体制の充実

■新エンゼルプラン
1999年、少子化対策推進基本法方針の決定を受けて、従来のエンゼルプランの見直しが図られ、策定される。2000年度から5ヵ年の施策計画「少子化対策推進基本方針」を具体化したもの。

■子供・子育て応援プラン
2005年の新エンゼルプラン終了に伴い、2004年(平成16年)策定される。平成21年度までの5ヵ年に実施される具体的な内容と目標が示されている。
・子供が健康に育つ社会
・子供を産み、育てることに喜びを感じることが出来る社会

3、子供の健全育成
■児童館・・・児童の遊びを指導するもの2人以上が配置される
■児童遊園・・・児童の遊びを指導するものが配置される

2、児童虐待への対応

1、児童虐待の定義
保護者(親権を行うもの、未成年後見人その他のもので、児童を現に監護するもの)が、その監護する児童(18歳に満たないもの)について以下にあげる行為
・児童に対する身体的外傷、または生じる恐れの有る暴行を加えること
・わいせつな行為、または児童にわいせつな行為をさせること
・減食または放置など、保護者としての監護を著しく怠ること
・激しい暴言、拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他児童に対して心理的外傷を与える言動を行うこと

■厚生労働省における定義
・身体的虐待・・・生命・健康に危険のある身体的な暴行
・性的虐待・・・性交・性的暴行・性的行為の強要
・ネグレクト・・・保護の怠慢や拒否により健康状態や安全を損なう行為
・心理的虐待・・・暴言や差別など心理的外傷を与える行為

2、児童虐待の実態
■原因
・親の側の要因・・・親自身の虐待の経験・経済的困難、親族・近隣・友人からの孤立・夫婦の不和
・子供の側の要因・・・望まぬ妊娠の子、頑固で育てにくいなど育児に負担を感じやすい、低体重・多胎など養育に苦労を感じやすい子
・親子関係による要因・・親または子供が長期入院していたため親子関係が形成しにくいなど

3、児童虐待防止への対策
虐待された児童の自立を図るには、トラウマの修復など精神的なケアが必要である。
児童養護施設の職員
1999年・・心理療法を担当する職員の配置
2001年・・被虐待児個別対応職員の配置
2004年・・家庭支援専門相談員の配置(児童養護施設・乳児院・情緒障害児短期治療施設・児童自立支援施設)、被虐待時個別対応職員(母子生活支援施設・情緒障害児短期治療施設・児童自立支援施設)に配置

4、児童虐待の通告義務
児童福祉法または児童虐待の防止等に関する法律により、虐待されている児童を発見した場合は福祉事務所または児童相談所への通告が義務づけられている。その際の調査や一時保護の権限は児童相談所所長にあるため、児童は福祉事務所を通じ、児童相談所に送られる。

5、虐待への措置
子供が虐待されている恐れが有る場合、児童委員などによる立ち入り調査が行われる。また、保護者が児童を虐待し、著しくその監護を怠るなど、保護者に監護させることがその児童の福祉を害する場合は親権者の意に反しても、児童相談所が家裁の承認を受け措置をとることが出来る

第6章 母子保健の施策

1、母子保健の概要と実施体制

1、母子保健の概要
結婚前から妊娠・出産、そして乳幼児の子育て期を通じて、一貫して総合的な母子保健が推進されている。健康保険施策は健康診断・保健指導など、療養援護等及び医療対策等の領域において対策が行われている。

2、母子保健の実施体制
母子保健行政の実施機関は市町村である。
都道府県は、母子保健を担当する部局を設置し、母子保健事業に関する企画・立案・予算の計上・配分、及び市町村の母子保健の指導を行う。
市町村は、母子保健を担当する部局を設置し、基本的なサービス
・母子健康手帳の交付
・保健指導
・健康診査
に関する業務を担当する

3、健やか親子21の策定
2001年から2010年までの10年間の母子保健の取り組みとして、健やか親子21を策定
・思春期の保健対策の強化と健康教育の推進
・妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保と不妊への支援
・小児保健医療水準を維持・向上させるための環境整備
・子供の心の安らかな発達の促進と育児不安の軽減

2、母子保健施策の実際

1,妊産婦および乳幼児の健康診査(実施機関は市町村)
・妊婦健康診査
・乳幼児健康診査
・一歳六ヶ月健康診査
・三歳児健康診査

2、妊産婦及び乳幼児の保健指導
・妊娠の届出
・母子健康手帳

3、妊産婦及び小児に対する医療援護
・妊娠高血圧症候群など療養の援護
・未熟児養育医療・・・低出生体重児の届出義務、養育医療の給付
・自立支援医療
・小児慢性特定疾患治療研究事業

4、周産期医療対策
5、乳幼児健康支援一時預かり事業・・・保育所に通所している子供が病気回復期で自宅療養が必要な期間に、保護者の勤務などで育児が困難なときに保育所や病院で一時的に預かる事業
6、緊急サポートネットワーク事業・・・子供が急病のときに、退職した看護士や保育士が預かる事業

第7章 保育問題と福祉対策

1.社会の変化と保育問題

夫婦共働きの家庭の増加が要因のひとつ。わが国の経済は女性の労働力なくしては成長できないといわれており、女性の労働力は量的・質的に大きく変化してきている。
また出生率の減少も変化のひとつである。

1、少子化がもたらす子供への影響
・親から過度の干渉を受け、子供の自立性が損なわれる
・子ども自身が兄弟姉妹や近隣の仲間の中で切磋琢磨する機会や思いやりを培ったり、我慢することを学ぶ機会が減少する→社会性が育ちにくくなる

2、家庭や地域における子育て機能の低下
女性の就労と育児の両立という課題から、保育所制度のあり方に変化が求められる

2、保育施策の概要

1、保育所における保育
■保育所における保育の目的
保育所は条例に定める理由により、保育に欠ける状態の乳幼児を保育することを目的とする。
保護者が
・昼間労働することを常態としていること
・妊娠中または出産後間がないこと
・疾病にかかり、もしくは負傷し、または精神もしくは身体に障害を有していること
・同居の親族の常時介護
・震災・風水害・火災など災害の復旧に当たっていること

■保育所の最低基準
・乳児や満二歳に満たない幼児を入所させる保育所は、乳児室またはほふく室(ハイハイが出来る部屋)・医務室・調理室・トイレを設けること
・乳児室の面積は、乳幼児(満二歳未満)一人につき1.65㎡以上、ほふく室は3.3㎡以上であること
・満二歳以上の幼児を入所させる保育所は、保育室または遊戯室、野外遊技場、調理室・トイレを設けること
・保育に必要な用具を備えること

■職員の基準
保育所には、保育士、嘱託医および調理員をおかなくてはならない
・乳児おおむね三人につき保育士1人以上
・満一歳~満三歳未満はおおむね6人に保育士1人以上
・満三歳~満4歳未満はおおむね20人に保育士1人以上
・満4歳以上の幼児おおむね30人に保育し1人以上

2、特別保育対策
近年、特に低年齢児保育や延長保育、緊急、一時保育などのニーズが高まり、2005年(平成17年)に「保育対策等促進事業」として次のように再編される
・一時、特定保育事業
・乳幼児保育等促進事業
・地域子育て支援センター事業
・休日・夜間保育事業
・待機児童解消促進事業
・保育環境改善等事業

3、認可外保育施設
認可外保育施設の設置者は、事業開始や必要事項を都道府県知事に届けることが義務づけられる
(2001年)
■事業所内保育施設・・・従業員の子供を保育する施設。国からの補助あり
■へき地保育所・・・保育所が設置されていない地域の保育所。国からの補助あり
■その他の保育施設・・・私人、団体、民間企業などによる乳幼児のための保育施設(ベビーホテルを含む)がある。現在職員の配置基準や環境について指導されている。

第8章 障害児のための福祉対策

1,障害児問題の理念と概要
■バリアフリー・・・障壁から自由になる、障壁に縛られないこと
■ノーマライゼーション・・・基本的には、誰もが社会や地域で生活できるように互いに支え合っていること

1,障害者福祉の理念
1975年、第30回国連総会において、「障害者の権利宣言」が採択される。
障害者は、その人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。障害者は、その傷害の原因、特質および程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の権利を有する

2,障害者問題の概要
1,傷害とはなにか
「障害者基本法」では、障害者について「身体障害、知的障害または精神障害があるため、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受けるもの」をいう
近年では、障害児(障害者)を一般と変わらないニーズを持つノーマルな市民として理解する考え方が、国の内外に広まっている

2,身体障害児とは(身体障害者福祉法)
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能・言語機能・または咀嚼機能の障害
・肢体不自由
・心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・直腸・小腸・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害等の傷害
であり、1~7級の等級が設定されている

3,知的障害とは(学校教育施行令)
「知的発達の遅滞があり、意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のものおよびその程度に至らないが社会生活への適応が著しく困難なもの」としている。
おおむねIQ75~70程度以下

2,障害児問題の実施体制

1,障害児施策の概要
■障害児の早期発見と予防
・フェニルケトン尿症(先天性代謝異常)
・先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
などは、早期発見(マス・クリーニング検査=集団検査)で障害の発生を予防することが可能。
・ポリオ(急性灰白髄炎)はワクチンの投与により、我が国ではほとんど発生していない

■在宅の障害児のための支援施策
・児童居宅介護事業(ホームヘルプ)
・児童デイサービス事業
・児童短期入所事業(ショートスティ)
・障害児相談支援事業
・補装具の交付、修理、日常生活用具の給付、自立支援医療の給付

■施設における福祉施策
・自閉症児施設
・難聴幼児通園施設
・肢体不自由児通園施設
・肢体不自由児療護施設・・・病院等に通院させるほどではないが、家庭での療育が困難な児童

2,自立支援医療費と療育の給付
■自立支援医療費の給付
指定自立支援医療機関で治療を受けかかった費用の1割を負担。一定の所得以上のものは3割負担。

<対象となる給付内容>
・診察、薬剤または治療材料の支給
・医学的処置(手術・治療・施術)
・居宅での療養上の管理・世話・看護
・診療所への入院・世話・看護
・移送
<給付の対象>
・視覚障害によるもの
・聴覚・平衡機能障害によるもの
・音声・言語・咀嚼機能障害によるもの
・内蔵機能障害によるもの(一部を除き先天性のものに限る。手術により将来生活能力を得る見込みのあるものに限る)
・肢体不自由によるもの

■療育の給付
都道府県は、結核にかかっている児童に対し、療育の給付を行うことができる
・医療
・学習および療養生活に必要な物品の支給

■療育の指導
都道府県知事は、保健所を指定して療育の指導を定期的に行うことになっている。保健所長は、身体に障害のある児童につき、診査を行い、相談に応じ、必要な療育の指導を行わなければならないと規定している。

■小児慢性特定疾患治療研究事業
厚生労働大臣が定める慢性疾患にかかっていることで、長期にわたる療育を必要とする18歳未満の児童、または政令で定める疾患にかかっている18歳以上20歳未満の者の健全な育成をはかるために研究をする事業

第9章 非行問題・情緒障害

1,非行問題の対策
1,非行問題の概要
■非行少年とは
非行は、反社会的な行為を行ったり、盛り場などを徘徊するなどして警察の補導対象になっている場合を指します。警察に補導されなければ非行少年としては扱われないこと

<非行少年の定義>
・罪を犯した少年(犯罪少年)・・・14歳以上で犯罪を行った少年
・14歳に満たないで刑罰法令にふれる行為をした少年(触法少年)
・その性格または環境に照らして、将来罪を犯し、また刑罰法令に触れる行為をするするおそれのある少年(虞犯(グハン)少年)

■少年非行の傾向・特徴
・第二次世界大戦後・・・貧しさが原因の窃盗が多かった
・高度経済成長期・・・豊かさの中の非行・非行の低年齢化
・昭和40年代以降から今まで・・・いじめ・家庭・家庭内暴力が代表になる

2,非行問題対策の実施体制
■内閣府の取り組み・・・青少年の非行問題に取り組む全国強調月間を定めた
■法務省の取り組み・・・保護司会やボランティア団体などの協力により「社会を明るくする運動」を毎年7月に行っている
■警察庁の取り組み・・・例年、学校の長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)明けの時期に、家で少年の発見保護活動を強化し、家出人の捜査発見、及び非行化防止のための活動を行っている
■非行問題解決のための対策の概要
家庭環境の問題があり、非行傾向を持つ子供については、児童相談所における判定結果に基づいて
・児童または保護者を調整し、誓約書を提出させる
・児童福祉司、社会福祉主事、児童委員などに指導させる
・里親に委託する。または児童自立支援施設などの児童福祉施設に入所させる
■家庭裁判所に送致する
警察が非行少年を発見→その場で調査及び捜査をする→検察官・家裁・児童相談所などに送致・通告

少年鑑別所が行った鑑別結果を総合的に考え、少年院への送致・児童自立支援施設・児童養護施設への送致が行われる

■2007年(平成19年)少年法改正
・警察が触法少年を発見した場合、調査を行う権限を持つことが明記された。
・家裁は処分決定に満たない14歳未満の触法少年に保護処分を行うことが出来るようになった
・少年院送致の下限が14歳以上から12歳以上へ
・保護観察の措置の強化
・保護処分で本人の更正を図ることが出来ない場合は、児童自立支援施設や少年院への送致を行うことが出来るようになった

少年非行に関わる機関・施設・根拠法
■機関・・・警察・家庭裁判所・児童相談所
■施設・・・児童自立支援施設・少年院・少年鑑別所・少年刑務所
■根拠法・・・児童福祉法・少年法

2、情緒障害への対策

1、情緒障害
心因性あるいは環境に起因するものとされ、施設での治療対象となる問題行動をさす。
・場面寡黙・・・家庭以外では話せない
・不登校
・心気症・・・身体的な病気がないことははっきりしているが、自分は病気ではないかと不安になる
・家庭内暴力
・摂食障害
・抑うつ状態
・不安
・不眠

2、情緒障害児短期治療施設
軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所、または通所させて治し、あわせて退所した者について相談他の援助を行うことを目的とした施設
最近は虐待のトラウマの問題の対処が増えている

第10章 児童福祉の機関・施設における専門職

1、児童福祉における専門職とは

1、児童福祉における専門職の資格の概要
児童福祉事務所の社会福祉主事などは、都道府県知事または市町村長の補助機関の職員であることを要件としており、さらに社会福祉主事は20歳以上であって、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の地道に熱意の有るものを基礎的要件としている。
それぞれ「社会福祉法」「児童福祉施設最低基準」「社会福祉法」に定められた資格要件を必要とする。

2、児童福祉における専門職の養成
児童福祉機関の職員は、福祉や心理学系の大学のほか、厚生労働大臣の認可を受けた社会福祉施設などで養成されたものが多くみられる。

2、児童福祉の機関・施設における専門職

1、児童相談所
・所長
・児童福祉司(児童ケースワーカーの一種)・・・児童相談所長の命を受けて、児童の保護その他の児童の福祉に関する事項について、相談に応じ、専門技術に基づいて必要な指導を行う
・心理判定員
・医師
・看護士
児童指導員
・保育士
・社会福祉士

2、福祉事務所の職員
・所長
・査察指導員
・社会福祉主事
・知的障害者福祉司
・身体障害者福祉司
・ケースワーカー
・家庭相談員・・・都道府県または市町村の非常勤職員。家庭児童相談室に配置

3、児童福祉施設の職員
・施設長
・児童指導員
・保育士
・児童自立支援専門員
・児童生活支援員
・児童の遊びを指導するもの
・母子指導員
・心理療法を担当する職員
・保健士
・看護士
・助産婦
・医師
・理学療法士
・作業療法士
・栄養士
・調理員
・事務職員

4、児童福祉における資格
国家資格として確立しているもの、「児童福祉法」関連の法令に規定されている任用資格のままのもの(児童指導員や社会福祉主事など)がある。

プロフィール

Mikami Kako

Author:Mikami Kako

おことわり

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