第15章 文化政策の今後の方向ー21世紀の新たな文化政策を目指してー

1、文化政策の背景にある二つの方向

●普遍化の個性化
明治維新以来、わが国はそれまでの制度・慣習を捨て、欧米を範としながら、戦前には富国強兵と殖産産業を是正し、戦後は高度経済成長の道をひたすら突き進んだ。
1970年代の石油ショックを契機に、高度経済成長から安定成長へ移行する段階で、ようやく対米一辺倒の姿勢に反省が見られるようになった。しかしながら、1990年代におけるバブル経済の崩壊に伴う不況の中にあって、再び市場原理主義を標榜する米国流のものの考えかたが世界を席巻し、特にわが国はその津用影響を受けている。

文化を「人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果」であり、「衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容を含む」ものと解釈すれば、明治以来の欧米化主義は、広義の文化政策そのものであったといえる。

一方、狭義の文化政策は、ほぼ一貫して「芸術文化」「生活文化」「国民娯楽」「文化財」「国語」「著作権」および「宗教」を固有の対象領域としてきた。そして欧米文化文明を普遍的存在と観念し、これに歩調をあわせる方向とわが国の伝統文化の固有性を想起し、確認しようとする方向が微妙に交錯し織り成された。

二つの方向は互いにせめぎあい、あるいは溶け合いながら、これまで文化政策の背景を背景をなしてきたといえる。

●両方向の調和と均衡
普遍化の方向は、1970年代の二度にわたる石油ショックを契機とする高度経済成長のかげりとともに強く反省されはじめた。欧米世界以外の国々の発言権は強まり、国際政治・経済関係は「不確実性の時代」に入った。いわば、欧米近代文明の優位性は失われ、世界文化の一つとして相対化して捉えられるようになった。

1980年代に入って「文化の時代」はこのような時代状況を言い表したものである。
一方、文化の時代はすでに地方の側から起こっていた。「地方の時代」は地域の側から提起された「文化の時代」の主張でもあったわけである。
地球規模化(グローバリゼーション)の進展が著しい。インターネットの普及がそれを推し進め、文化の面では、いわゆる非国境化(ボーダレス化)が急速に進みつつある。

2、文化政策の深化と拡大

●文化政策の中の中核領域
1)中核領域の一層の深化
文化政策の中核領域は、機能的に見れば、文化の頂点の伸張と文化の裾野の拡大を縦・横の軸とし、これに文化遺産の保存と活用・文化の国際交流の推進・およびこれらすべてを通じる文化基盤の整備に集約される。
文化遺産はわが国の歴史・伝統・文化などの理解に不可欠なものであり、その保存と活用は将来のわが国の文化発展の基礎を培う。

2)「表現」関わる施策の導入
近年では個々人が文化の享受者であると同時に創造者であるといった状況が生じ、プロフェッショナルとアマチュアの境を不分明にする傾向が強まっている。
今後文化政策の対象として、「創造」と「享受」の間に「表現」と言う範疇を導入し、これに焦点を当てた施策の展開が必要である。

3)創造と享受を「媒介」する機能の強化
創造と享受をつなぐ媒介者には、出版社・マスコミ・評論家・プロデューサー・アートマネージメント担当者・文化政策研究者・文化庁政官・国際交流の専門家・地域の文化指導者など様々な存在がある。

4)「生活文化」への対応
生活の文化化は、ソフト・ハード両面を通じ、文化的な環境が実現されることを意味する。とりわけ、生涯学習とは密接に関連し、福利・厚生のありかたとの関連も深い。文化的環境は、環境の保全を含む快適環境(アニメティ)の形成がその基礎となる。

●マルチメディアの普及に伴う文化芸術の変容への対応
文化芸術活動の主体は、芸術家といわれるプロフェッショナルと参加型文化活動に見られるアマチュアに区分される。
いずれの場合も、活動の場が重要な要件となっている。そして、これら三極構造の外側には、創造・鑑賞・場のそれぞれを援助し。あるいはこれら全体を支える支援者が存在している。

●文化政策の関連領域
1)アメニティの形成に関わる施策
近年、都市空間や近隣の自然について、景観、風景、水辺、里山などの名のもとに、アニメティ形成の動きが顕著になっている。
日常の生活空間として、事故の周囲に文化的環境が実現する事は国民の願望であり、文化政策の立場から積極的な対応が要請される。

2)産業文化に関わる施策
これからの工業製品には、機能面のみならず負荷価値の高い製品が求められており、そのためにはデザイン性が強く求められる。芸術の一ジャンルである、このような産業の文化化ないし、文化産業の育成は、文化政策において重要な一翼をなすものである。

3)情報文化に関わる施策
高度情報化の進展は、前述した新たなジャンルの出現等に加え、文化芸術の関わる媒体ないし流通の確信を促す。これら情報文化に関わる施作に関しては、文化性s買うの立場から積極的に関与していく必要がある。

4)スポーツ福祉との関連
スポーツは生活の余暇において重要な位置を占め、生活の向上に資し、広義の文化の範疇に属する。このようなスポーツ・福祉の分野に対しても、文化政策の視点から積極的な対応が要求される。

3、総合文化政策の確立

●総合文化政策確立の留意点
第一は、教育・経済・民間団体との関係の強化
第二は、文化政策形成過程の洗練とマネージメント性への配慮

●総合文化政策の確立に向けて
国・地方公共団体と民間企業・民間財団・ボランティア団体等との役割分担を明確にし、それぞれが協力し合い、あるいは競合しつつ、全体としてわが国文化の進展に資するような枠組みを構築する事が必要である。

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第14章 文化財の新たな類型ー文化的景観ー

1、景観の概念と景観法

文化景観は、都市景観・交通景観・工業景観など、一般的に複雑な概観を示すが、自然景観とは異なるものとして概念化される。
景観は、単に空間とその構成要素と言うだけでなく、「それぞれの時代における人々の必死の生き様の結果として、時代の産物」として創られてきたと考えられている。

●国際的な動向
世界遺産概念の見直しは作業は1080年代から始まっていた。人間が全く影響しない純粋な自然地域と言うのは極めて少なく、人間と自然との共存によって顕著な普遍的価値を有するようになった自然地域が大多数であると言う実態を踏まえ、特に田園風景を世界遺産の概念の中にどのように位置づけるかと言う議論がなされたのである。
世界遺産条約が自然と文化のその両方の価値を分かちがたいものとして認めたその出発点から考えれば、当然進むべき方向であったといえる。

<文化的景観の分類>
第一領域:人間の意志によって設計され、意思的に作り出された景観
第二領域:A・・進化の過程が過去のある時期に突然、あるいは時代を超えて終結している残存景観(化石景観)
B:伝統的な生活様式と密接に結びつき、現代社会の中で活発な社会的役割を保ち、進化の過程からいまなお進行中である継続中の景観
第三領域:自然的要素の強力な、宗教的、芸術的または文化的な関連性によって定義される景観

このように文化的景観は、特に保護のあり方にも多大な困難が伴い、地域住民の参加による生活向上のための基盤整備や伝統芸能、習俗の保存、地域コミュニティの維持も含めた具体的かつ総合的な文化遺産全体の保護が求められる。

●景観法の誕生と仕組み
2004年、急速な都市化の進展、経済性重視の街づくりから転機をはかり、美しい町並みなど良好な景観に関する国民のニーズに応じるため、景観録三法が制定された。

原則として市町村から構成される景観行政団体によって策定される景観計画では、
・建築物の建設等に対する届出・勧告を基本とする穏やかな規制(必要な場合は変更命令が可能)
・景観上重要な建築物・工作物・樹木を指定する
・建蔽率制限や斜線制限などに関する規制緩和措置を取る
など積極的に保全することが出来る。

良好な景観形成のためのより多様な取り組みを支援する目的で新たに都市計画法の地域チクのひとつとして「景観地区」がある。

2、文化的景観の現状と課題

●文化的景観の概念と保護の枠組み
 文化的景観は、「地域における人々の生活または生業及び当該地区の風土により形成された景観地で、わが国民の生活または生業の理解のために欠くことのできないもの」と定義された。

●文化的景観の現状
CIMG0208.jpg棚田は、急な斜面を開墾して階段状に造成した水田で、歴史的にも重要な文化遺産である。

●文化的景観保護の課題とその方向性
人々の生活の中で、里山とのかかわりが減ってきている事から、竹林の増加や森林の維持管理の問題が生じてきている。

文化的景観は生活と密接に関わって形作られた風景であり、そこに現在生活する人々の営為と切り離す事はできない。その保護に当たっては、人々の私的な財産権や多様な生活と直結するために、それぞれの利害をどう調整していくのか、また文化観光やボランティアとの関係をどうしていくのか、さらには、当該地域の持続可能な生業、生活条件の整備をどう行うかまで踏み込む必要がある。

3、文化的景観の社会的意義

●文化的景観の社会的価値
文化的景観は、穏やかな規制と地元主導で運用する制度であり、指定文化財を凍結保存するあり方とは大きく異なる。
棚田のような様々な価値を保護する事が、誰にとってどのような意味をもっているのかについて知ることも重要であろう。市場で現れやすい利用価値のほかに、市場で取引されにくい非利用価値があると想定される。

●定量的評価は可能か
仮想評価法・・・環境保護施策などのシナリオに対して、直接人々の支払い意識額を確認する事が出来る。
ただし、この支払額に影響を与えているのは利用価値ではなく、遺贈価値・存在価値といった、市場では取引されない非利用価値であること、さらに、居住地域・性別・年齢・学歴・職業といった属性と支払意思との相関は見られず、集落の文化的景観は社会全体に裨益する公共財としての性格が極めて強い。

●文化資本としての文化的景観
文化的景観は地域の人々のアイデンティティのよりどころであり、市場では取引されない価値を有し、さらには集落への雇用創出や観光消費による経済効果などをもたらす。まさに地域資本といえる。
このような便益の受益者を代表する国や地方公共団体などの公的機関、訪問者や関心を有する人々など、多くの主体が地域住民と一体になって文化的景観の価値を高め、維持していく必要性がある。


第13章 文化財保護をめぐる国際的な動向ー世界遺産条約、無形遺産条約と文化多様性条約ー

1、世界遺産条約

●世界遺産条約の誕生
世界遺産条約は1972年、第17回ユネスコ総会において採択され、1975年に締結した。

顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産は、それが存在する国やその国の国民のものであるのみならず、人類にとって無類のおよびかげがえないのない物件であって、これを損傷・破壊などの脅威から保護し、保存するための国際的協力及び援助の体制を確立する事を目的とする。

世界遺産条約は、従来相反すると考えられてきた文化と自然に密接な関係を認め、ともに保護する対象として一体化し、「世界遺産」として概念化したところに特色がある。

●世界遺産条約の枠組みと意義
条約はまず「世界遺産」を定義した。
・文化遺産・・・記念工作物・建造物群・遺跡
・自然遺産・・・無生物・生物の生成物からなる自然の地域、地質学的形成物、脅威に晒されている動物たち
これらを認定し、保存し、整備し、将来の世代へ伝えるべく最善の努力をすることは、第一義的には当該締約国政府の義務であるとしている。
登録された世界遺産に対しては、必要に応じて国際的援助が与えられる。

●今後の課題と方向性

文化遺産の数が自然遺産の数を圧倒的に上回るのは自然遺産が客観的な基準による厳格な登録が求められるのに対し、文化遺産においてはその価値基準が相対的であるため、ややもすると政治的な配慮や圧力が入りやすい事が伺われる。
文化遺産がヨーロッパや北米に集中するのに対し、自然遺産は発展途上国に多い。このことは世界遺産の概念がヨーロッパ文明を中心とするモニュメンタルなれ騎士的建造物を中心に作り上げられていたことも要因のひとつである。

世界遺産登録に当たって、貧富の差が影響する事が指摘されている。多くの途上国では、貧困や国内紛争、法整備や保護体制の遅れから文化遺産が登録されない事もある。

今後予想される締約国の増加、登録件数の増加に伴い、地域・対象・の不均衡や財政的な遍迫も考えられる。

2、無形遺産条約

●無形遺産条約の誕生と意義
2003年に採択され、2006年に発効した。
無形遺産条約は、これまで民間伝承・民俗文化財・口承伝統などと呼ばれてきた無形の文化を人類共通の文化遺産としてとらえ、国際的な保護体制を定めたことに大きな意義がある

●今後の課題
無形遺産条約はまだはじまったばかりであり、傑作宣言(人類の口承及び無形遺産の宣言)や韓国をはじめ様々な機会に論議されている課題も多い。
・「無形遺産」の概念が共通化されにくいことや、生きて進化する無形文化財の持つ特異性も障害となった。
・遺跡キャンペーンに見るような目に見えてわかりやすい効果、とりわけ政治的・社会的効果が得られにくい。
・口承者の問題では、個人であるのか団体であるのか、その対象者がわかりにくい
このように失われやすく、きめ細かい複雑な保護が求められる無形遺産には特有の課題があり、充分配慮する必要がある。

3、文化多様性条約の誕生とその背景
2005年、第32回ユネスコ総会は「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」を採択した。この条約の背景にはフランス・カナダを中心とする推進派が途上国を巻き込んでアメリカと対決すると言う背景がある。文化と結びついた産業の保護・自由貿易の原則をめぐる各国の利害が絡んでいる。

そもそもの発端はフランスは長年にわたりアメリカとは対立していた。映画はフランス人のリュミエール兄弟によって発明されたが、映画産業は二つの大戦後大きくアメリカの中心文化となった。これに対して文化を失う事を恐れたECは量的輸入制限を設ける。これ以降対立はますます深まる。

●文化多様性条約の枠組みとその意義
文化的多様性に関する世界宣言の精神を引き継ぎ、文化の多様性が地域社会、人民、諸国のための持続可能な開発を推進するものであるという認識に立っている。
「文化の多様性」は集団及び社会の文化の表現を見出す多様な方法として了解され、集団及び社会の中、あるいはこれらのなかで受け流されるもので、芸術的な創造、生産、普及、配布及び享受の多様な様式によっても表明される。

●今後の課題と日本の文化政策
無形遺産条約の推進役で、文化の多様性を尊重する立場であった日本は、他の国際協定の整合性を伴って運営されるべきとの附帯決議を付して採択した。

この条約では、自由な貿易原則と文化多様性の2つの大きな原則をいかに調和し、世界文化の豊饒化につなげていくかが問われており、文化的価値を尊重するという基本的な理念にたって、経済的な面との調整を図る必要があろう。

多くの課題と論議をはらむこの条約は単に「WHOのサービス貿易交渉の延長線上にある」と捕らえるのではなく、日本国民、人類全体にとっての望ましい世界文化のあり方はなにか」という観点から運用が図られるべきである。


第12章 地域文化施設の設置・運営ー文化会館と博物館・美術館ー

1、文化会館

●文化会館の沿革
文化会館は1960年代に地方都市を中心に次第に整備されていった。
文化会館は集会機能を持つ公会堂建築に起源を発したため、当初は文化講演会等の機能を持ったが、次第に舞台芸術上演を持つ機能を持ち始め、鑑賞者の質の向上に寄与した。そしてその質の向上がジャンル別の専用ホールを持つ文化会館施設へと繋がった。

●文化会館の機能と範囲
1、地域の文化振興・交流の拠点
2、地域のシンボル・街づくりの拠点
文化会館は種種の機能を持つが、その反面、運営面において貧弱なものが多い。この理由として文化会館の事業費やスタッフの貧弱なことが上げられる。
設置者が地方公共団体であることから、文化会館の職員は定期的な人事異動により派遣されるため、運営・管理・企画の知識が蓄積されないことや、館長に充分な裁量権が与えられていないという問題もある。

●公民館と文化会館
公民館は社会教育施設として、社会教育の一環に位置づけられている。
文部科学省は公民館を地域の学習拠点、地域の家庭教育支援拠点とし、公民館には生涯学習の中核的な役割を期待している。

●文化会館の管理・運営
地方公共団体が公的な施設として整備する限り、地方自治法上文化会館は「住民の福祉を増進する目的を持ってその利用に供するための施設」である。
一部の住民や団体に対し長期かつ独占的な利用を認める事は原則としてできず、また、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用する事を拒んではならない。

●文化会館の実態と課題
施設に比べて公園や利用形態が貧弱である。理由は館長をはじめスタッフの能力不足によることもあろうが、博物館などの文化施設に比べ、整備のための法的根拠や基準がないため、専門的な職員の不足と設置者(地方公共団体)の都合による人事異動によって、運営のノウハウが蓄積されにくいからである。

文化会館の持つ施設設備と職員の内部能力といった内部要因を考慮したマーケティング手法に基づく運営方法「ひと・もの・かね・情報」も考えられる。文化会館の設置目的あるいは理念と、これに基づきあらかじめ定めた指票(例えば、ホール稼働率・自主企画事業実施など)を定期的にチェックし、今後の事業にその結果を反映させることも有効である。

また、地域住民への働きかけとして、文化会館の事業内容の情報公開と積極的な情報発信を行う事は言うまでもないが、住民が地域の顔としての文化会館に気軽に立ち寄れるような利用規則の改正や設備の改善、運営管理への地域住民の参画が有効である。

2、博物館・美術館

●博物館法と博物館
博物館は博物館法で規定されている「登録博物館」、博物館に相当する施設として指定を受けた「博物館相当施設」、および博物館と同種の事業を行う「博物館類似施設」に分かれる。
博物館を設置できるのは、地方公共団体・民法上の法人・宗教法人・独立行政法人・日本赤十字社・NHKである。
博物館は収集・展示する資料の種類によって歴史博物館・美術館などに区分される。

●館長・学芸委員などの職員
博物館法上の博物館には、館長のほかに専門的な職務に従事する学芸員とその職務を助ける学芸員補がおかれる。
館長は学芸員の資格が必要とは限らないが、学芸員資格を持っていることが望まれる。しかし、地方公共団体の人事に組み込まれるので、博物か運営の経験のないものが任命されることもある。
設置する地方公共団体の財政改革により学芸委員の減少化が懸念されている。

●博物館の性格と期限
博物館の機能は、資料の収集・保管・展示・調査研究があげられるが、その機能への特化の程度に応じて、博物館は社会教育施設・学術施設・さらに文化活動と関連する文化施設としての面を持つ。

●美術館の概念と機能
収集した芸術作品や、歴史的にあるいは美学的・科学的に有意義な資料を保管し、またそれを展示してその価値を強調する施設である。

美術作品が従来のような形ある作品にのみならず、デジタル技術の発展のによりデジタル化し、ヴァーチャル美術館としてネット上に仮想空間としてネット上に存在している霊も散見される。
美術館の収集展示作品の進化によって美術館は発展していく。

●博物館・美術館の課題
入館数はここ10年程度は横ばいである理由
・学芸員の質と量の不足
・展示に対する興味不足
・体験的な展示の不足
・館のイメージが堅苦しい
・他施設(社会教育施設や文化施設・学校)との連携が出来ていない

博物館運営を成功させるには、博物館の持つ資料や人材を斬新なものとし、施設などの資産の劣化を防ぎ、新しい投資を行って新事業を展開し発展させることが必要である。

3、指定管理者制度の導入と課題
個々の公の施設において指定管理者制度を導入することにした場合
1、指定の手続き(申請・委託の選定、事業系管区の提出)
2、管理の基準(休館日・開園時間・使用制限の要件など)
3、業務の具体的範囲(施設・設備の維持管理、個別の使用許可など)の必要な事項を条例で規定しなければならない。

第11章 地域文化活動の支援ー国と地方公共団体の役割ー

1、地域文化活動支援の根拠と現状

●支援の根拠
文化活動を支援する根拠については、その創造行為という活動自体が人間の創造性を高めるという本質に由来している事が求められるほか、これを享受することによる社会全般の教育・文化の水準の向上、観光やコンテンツ産業周辺の文化産業の振興に貢献するといった経済的な効果、あるいは文化財・町並みの保存に基づく景観作りによるアメニティ効果が得られる事など、様々な効果がある点が指摘されている。

●国と地方公共団体の支援の現状
地方自治法の改正により、国と地方公共団体の役割分担が明確にされたことにより、地方公共団体は地域における行政を自主的に広範な行政事務を執行することが可能となった。国の役割は全国的な規模や視点で実施すべき支援策である。

●支援措置の類型
1、制度:地域住民が文化活動や文化政策決定への関与・参加・協力するしくみの整備である
2、人材育成:地域で継続的に活動可能な文化芸術団体や文化施設のアートマネージャー、芸術団体と住民・行政との連携を図るコーディネーターなど
3、拠点整備:文化施設は施設整備が専攻した関係で、その活動は活発ではないとの批判が多い。一方文化会館は地域社会における豊かな文化活動創造のための拠点である
4、新規の鑑賞者養成
5、情報発信
6、資金提供:地域における文化事業・文化芸術団体への活動資金提供の制度設計を意味する

2、国と地方公共団体の地域文化関係予算
1、制度面の支援:ふるさと文化再興事業(9億円)
2、人材育成:「展覧会事業支援」「文化ボランテイア推進モデル事業」「民俗文化財伝承・活用事業」(3.5億円)
3、拠点整備面:芸能拠点形成事業(10億円)
4、新規の鑑賞者養成:「本物の舞台芸術に触れる機会の確保」「伝統文化こども教室」「学校の文化活動の推進」「文化体験プログラム支援事業」「国民文化祭」(45.5億円)
5、情報発信:芸術情報プラザ事業(1億円)
6、資金提供:文化財関係が一番多く330億円

●地方公共団体の文化関係経費
文化会館などの建設が一段落して文化施設建設費が急激に減少した事により、施設費を負担していた市町村の支出額が減少してきた。
地方公共団体では、文化庁とは逆に芸術文化経費が大きく、文化財保護経費は少ない。
住民に身近な市町村は文化芸術書店整備重点的に資金を支出している反面、都道府県は文化施設の整備より文化団体や鑑賞者の要請などのソフト業界への重点化が目立つ。

●具体的な事例(東京都・兵庫県・横浜市)
「東京」
資金提供は人材面への支援に一部含まれているが、文化芸術団体へのっ直接の助成はない。
「兵庫県」
芸術文化センターの運営費が最も多く、考古学博物館の新設といった継続的でない経費を除くと拠点整備もかなり少なくなってきている。
「横浜市」
横浜みなとみなみホール用地取得といった継続的でない経費を除くと拠点整備もかなり少なくなってきている。

・文化施設の建設・整備およびその運営にかかる拠点整備費が最も多く、制度面への支援、人材面への支援、鑑賞者養成、情報発信、資金提供はかなりすくなくなってきている。
・国に比べ、文化芸術団体への資金提供経費が、全経費に占める割合・絶対額とともに少ない

3、今後の支援策の方向性とあり方

●国と地方公共団体の機能の分担
住民に身近な市町村は、住民の感性や社会意識のレベルに応じたニーズに沿った文化行政の展開が望まれる。また、身近な文化事業は市町村に委ね、都道府県は多くの市町村を含む広域的な事業を行ったり、市町村の財政規模などでは応じきれない大規模事業の展開に重点化すべきである。

国においては、全国的な規模の元、優れた芸術鑑賞機会の確保のための芸術団体への支援、鑑賞者層確保のための専門化育成や派遣及び学校教育の連携、地域固有の文化を育てるための制度設計や指針の提示、情報提供が文化予算の配分にあたり考慮されるべきである。

●財政改革下での文化支援と今後の課題
地方公共団体の地方税負担は上昇し、財政の硬直化が進んでおり、財政状況は厳しい状況にある。
予算が審議される議会での議論を活発化させ、住民の意思を伝えやすいようにして、議員の関心を高めるためにも、文化事業担当者や文化施設の管理・運営者も積極的に情報開示を行い、文化事業の効用や貢献を訴えるようにしたいものである。

第10章 国立文化施設の設置・運営ー国立劇場・国立博物館・美術館等ー

1国立文化施設の意義と沿革

●国立文化施設の設置者行政としての意義
国立文化施設:国立劇場、新国立劇場、国立博物館、国立美術館

「設置者行政」
1、国家的観点からの芸術文化活動の展開
2、国際的観点からの芸術文化活動の展開
3、文化政策全体との関連
4、他の文化施設に対する先導的・指導的な役割

●国立劇場・新国立劇場の沿革
・国立劇場
1966年、わが国の伝統芸能の保存と更新を図る目的として設置された。現在国立劇場・新国立劇場は、独立行政法人日本芸術文化振興会が設置施設として位置づけられている。

・新国立劇場
1997年、オペラ・バレエ・現代舞踊・演劇などの現代舞台芸術の振興・普及を図るために設置された。

●国立博物館・美術館の沿革
2001年から独立行政法人国立博物館によって設置・運営されている。
現在も文化財保護の一端を担っている。
国立新美術館は大型機各店の開催や全国的な公募点への施設提供などを主目的とし、現存の国立美術館とは幾分性格を異にしている。

2、国立劇場・新個公立劇場の事業
1、伝統芸能の公開
2、伝統芸能の伝承者の養成
3、伝統芸能に関する調査研究及び資料の収集・利用
4、劇場施設の貸付

「伝統芸能の公開」
国立劇場の自主公演は、古典伝承のままの姿により、出来る限り広く、各種の伝統芸能の演出や技法を尊重しながら、その正しい継承を目的としている。
「伝統芸能伝承者の育成」
歌舞伎俳優の養成・・1975年度から
竹本(太夫、三味線)・・1975年度から
鳴り物の養成・・1981年度から
寄席囃子の養成・・1999年度から開始されている。

●新国立劇場の事業
新国立激所湯の運営財団は「現代舞台芸術の公演などを行うとともに、あわせて施設の管理運営を行い、もってわが国現代舞台芸術の創造、振興及び普及に寄与するための事業を行う事を目的とする。

「目的達成のために」
・現代舞台芸術の企画、制作及び公演
・現代舞台芸術の実演家、舞台技術者にかかる研修
・現代舞台芸術に関する調査研究ならびに資料・情報の収集及び活用
・現代舞台芸術に関する地域交流
・現代舞台芸術に関する国際交流

「具体的には」
・現代舞台芸術の自主公演
・現代舞台芸術の鑑賞教室
・現代舞台芸術の実演家の研修
・国際交流事業
・芸術家における文化庁との共催公演
・地方公演

3、国立博物館・美術館等の概要

●国立博物館の概要
博物館を設置して、有形文化財を収集し、補完して公衆の観覧に供するとともに、コレに関連する調査及び研究所ならびに教育及び普及の事業などを行う事になり、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図る事を目的とする。
東京・京都・奈良・九州の四館(東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館)

●国立美術館の概要
美術館を設置して美術(映画を含む)に関する作品その他の資料を収集し、保管して公衆の観覧に供するとともに、コレに関連する調査及び研究所ならびに教育及び普及の事業などを行う事になり、芸術その他の文化の振興を図る事を目的とする。
(東京国立近代美術館・京都国立近代美術館・国立西洋美術館・国立国際美術館)

●文化財研究所の概要
文化財に関する調査及び研究ならびにコレに基づく資料等の作成及びその公表等を行う事により、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図ることを目的とする
(東京文化財研究所・奈良文化財研究所)

第9章 国による芸術文化活動の支援~支援行政の実態とあり方~

1、国による支援行政

●文化芸術活動支援の全体的な枠組み
1、舞台芸術活動への支援:「文化芸術創造プラン」(文化庁)、「芸術文化振興基金」、「舞台芸術振興事業」(芸文振)
2、美術の創造普及び活動への支援:「芸術文化振興基金」(芸文振)
3、映画への支援:「文化芸術創造プラン」(文化庁)、「芸術文化振興基金」(芸文振)
4、大衆芸能公演への支援:「文化芸術創造プラン」(文化庁)
5、伝統芸能公演、伝統文化の保存・活用への支援:「文化芸術創造プラン」(文化庁)、「ふるさと文化再興事業」、「国民文化祭」(文化庁)「芸術文化振興基金」(芸文振)
6、芸術の国際交流への支援:「芸術文化振興基金」(芸文振)、「文化芸術創造プラン」(文化庁)
7、新進芸術家などへの養成への支援:「文化芸術創造プラン」(文化庁)
8、地域文化振興への支援:文化芸術創造プランの「文化芸術による創造のまち支援事業」「ふるさと文化再興事業」「国民文化祭」(文化庁)「芸術文化振興基金」(芸文振)
9、文化施設への支援:文化芸術創造プランの「芸術拠点形成事業」など(文化庁)
10、文化ボランティア活動への支援:「文化ボランティア推進モデル事業」(文化庁)
11、子供の文化芸術活動への支援:文化芸術創造プランの「子供の文化芸術体験活動の推進」(文化庁)

●芸術創造活動推進への枠組み
1、最高水準の舞台芸術公演・伝統芸能などへの重点支援など
2、「日本映画・映像」振興プランの推進
3、世界にはばたく新進芸術家などの人材育成
4、芸術祭の開催
5、芸術家などの顕彰
6、舞台芸術振興事業
7、芸術文化振興基金

2、文化庁の文化芸術創造プラン

■最高水準の舞台芸術公演・伝統芸能などへの重点支援等
・芸術創造活動重点支援事業等の推進(芸術活動重点支援事業・芸術拠点形成事業)
■舞台芸術の国際フェスティバルの開催
■国際芸術交流支援事業

<映画・映像に対する支援>
「日本映画・映像」振興プラン
・魅力ある日本映画・映像の創造
・日本映画・映像の流通の促進
・映画・映像人材の育成と普及
・日本映画フィルムの保存・継承

<メディア芸術に関する事業>
・メディア芸術祭
・メディア芸術プラザ
・海外のメディア芸術祭への参加等支援

3、日本芸術文化振興会による支援(1990年発足)
1)芸術家及び芸術団体が行う芸術の想像または普及を図るための活動
1、オーケストラ・オペラ・合唱・室内楽・バレエ・現代舞踏・演劇等舞台芸術の公演活動
2、文楽・歌舞伎・能楽・邦楽・邦舞・演芸等伝統芸能の公開活動
3、美術の展示活動
4、映画の制作活動
5、先駆的または実験的な公演、展示活動
6、芸術の国際交流活動

2)地域の文化の振興を目的として行う活動(地域文化振興活動)
1、文化会館・美術館その他の地域の文化施設において行う公演、展示その他の活動
2、歴史的集落・町並み・文科系関東の文化財を保存し、活用する活動
3、民俗芸能その他の文化財を保存し、活用する活動

3)前期のほか文化に関する団体が行う公演・展示その他の活動(文化振興普及団体活動)
1、アマチュア等の文化団体が行う公演・展示その他の活動
2、文化財である工芸技術または文化財の保存技術の復元、伝承その他文化財を保存する活動

4、民間のメセナ活動
1、芸術文化支援等に関する啓発・普及・顕彰
2、芸術文化支援に関する情報の収集・配布・仲介
3、芸術文化支援活動の調査・研究
4、海外の同種の機関との情報収集・交流

5、支援に関する包括的な枠組みのあり方

●国による支援行政の三層構造
文化庁の文化芸術創造プラン、芸文振の芸術文化振興基金及び舞台芸術振興事業の3つからなる

<優先順位>
(頂点の伸張)芸術創造活動重点支援事業

国際芸術交流関係事業・芸術の拠点形成事業

舞台芸術振興事業

芸術文化振興基金による助成事業

芸術創造普及活動

地域文化振興活動・文化振興普及団体活動→裾野のひろがり

芸術文化活動の支援は、基本的には公的部門が担わなければならないとすれば、文化庁および芸文振による支援行政は、いわば正規軍に位置づけられる。民間部門による支援は、遊撃軍とみなすことが出来る。



第8章 文化財の保護ーその意義と一般的な枠組みー

1、文化財保護の意義

●文化財思想の変遷
日本における公共的な目的意識による文化財保護制度は、明治近代国家によってはじめて導入された。
文化財は「自らの現在を生み出したのは言うまでもなく歴史としての過去であり、現在を知る上でその探求が不可欠であることは言うまでもないが、同時に自らの新しい未来を創造し、発展させていく基盤として過去を捉える」と認識されている。

文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重しあう土壌を提供し、多様性を受け入れる事ができる心豊かな社会を形成するものである。

●文化財の概念
文化財とは
・有形文化財・・不動産を含む
・記念物・・貝塚・古墳などの史跡、庭園・海浜などの名勝、動植物、地質鉱物
・無形文化財・・演劇や音楽・工業技術

<他の国とは違う面>
日本人は人間と自然を連続して捉える考え方から、ニホンカモシカやジュゴンが保護の対象になったり、自然と人工が融合してできた庭園や山岳といった名勝がある。

<世界遺産条約の「文化遺産」の概念>
文化遺産は原則として「不動産」を対象にしている

●文化財保護政策の理念と目的
<立法理念>
「消極的な文化保存主義でなく、国内的には公開・国際的には文化財の交流など種々の活用面を媒介として、国民の文化的向上、さらに高次には世界文化の寄与せんとする積極的文化主義」である。
この法律の目的が揚げるのは、文化国家の建設と国民文化の向上のみならず、平和主義と表裏一体をなす文化的国際協調主義であることも注目される。
「保護」とは「活用」を含み。

2、文化財保護の変遷

●文化財保護の歴史
1871年 太政官布告「古器旧物保存方」・・文化財は時勢の変遷や制度風俗の沿革を交渉するために重要なものであるという認識のもと、各地の古器旧物類を時代を問わず、和製・舶来を問わず厚く保存
1897年 「古社寺保存法」
1929年 「国宝保存法」・・国、地方公共団体、個人所有の文化財まで保護の対象が広げられた
1933年 「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」(国宝以外の重要文化財の海外流出が相次いだため)

<記念物>
1874年 太政官布告と1880年 宮内省達・・古墳・遺跡を発見したら届ける制度
1911年 貴族院・・「史蹟名勝天然記念物保存法」近代の開発により遺跡や自然に破壊が進んだことをうけて、1919年 「史蹟名勝天然記念物保存法」が制定
・保護対象
文化的記念物(史蹟)
天然記念物(動物・植物・地質鉱物など)
人文的名勝(庭園・公園など)
自然的名勝(山岳。渓谷・海浜など)

●文化財保護法の誕生
1949年におきた法隆寺混同壁画焼失事件をうけ、1950年に議員立法として「文化財保護法」が制定、施行された。
・有形文化財(建造物・美術品)
・無形文化財(演劇・音楽・工芸技法)
・史蹟・名勝・天然記念物
を含む文化財保護の総合的な法律である。

「文化財」という新たな概念を導入し、保護対象範囲を拡大・明確化(無形文化財・埋蔵文化財・民俗資料の追加)、指定制度の体系化が図られた。文化財保護委員会を設置。

●文化財概念の拡大と手法の多様化
1)1960~1970年代:文化庁設置。指定及び解除については文部大臣が、その他の権原は文化庁長官が行う事になった
2)1980~1990年代:従来、文化財は現状変更を激しく禁止していたが、文化に対する国民のニーズの高まりがあり公開・活用を促した。
1992年世界遺産条約に加盟(原爆ドーム・・負の遺産)
1996年文化財保護法改正「建造物の登録制度」
3)2000年以降:文化芸術振興基本法
・文化財の不法な輸出入などの規制に関する法律
・新たな分浅井の概念として「文化的景観」が導入された

3、文化財保護の枠組み
●文化財保護の対象と内容
1、有形文化財
2、無形文化財
3、民俗文化財
4、記念物
5、文化的景観
6、伝統的建造物群
「建造物」と記念物の「遺跡」、「無形文化財」と「無形民俗文化財」の教会があいまいで実際重複領域を生じている。

●文化財保護の体系と手法
「選択保護主義」
保護の責任主体は一義的には占有者であるが、所有者によっては適切な保護措置が期待できない場合には、必要に応じて管理者を選任、あるいは管理団体を選任、指定することによって保護責任の明確化が図られている。
■有形文化財の場合
1、指定による保護対象の特定
2、現状変更および輸出の規制
3、管理・修理・修復
4、有形文化財の公開
■無形文化財の場合
1、指定による保護対象の特定(特に無形文化財に対しては当該無形文化財を体現しているもの・団体)
2、保持者などによる保存
3、文化財及び記録の公開・公演など
■埋蔵文化財
発見・発掘されれば、重要文化財への指定など他の方法で保護される。
1、発掘調査の規制
2、埋蔵文化財包蔵地における工事などの規制
3、貝塚・住居跡・古墳その他の遺跡に関する規制
4、埋蔵物である文化財の所有権帰属に関する民法・遺失物の特例
包蔵地の周知方法や記録保存の必要性の判断、費用の積算根拠など問題点も多い。発掘調査費用など事業主が負担することにも問題がある。また埋蔵文化財保護が地方公共団体の文化財保護行政の大半を占めている現実をどうするのか。全数保存されている出土文化財をどうるのか・・なども問題がある。


第7章 地域文化の振興ー地域社会と地域文化振興の発展ー

1地域社会と文化振興

●地域をめぐる状況
現在の地域の置かれている状況の特徴は、少子高齢化、生産者人口の減少、過疎化である。こういった状況を見据え、わが国では「自立の促進と誇りの持てる地域の創造」などの基本的課題を設定し、課題解決に向けて隠せ策を実施している。
地域住民の自由な創造性を重視し、個人の自由な活動を支える地域社会の形成に積極的に加わることの必要性が提言されている。

●地域文化振興による地域への波及効果
<富山県利賀村の例>
過疎対策の一環として交流人口(公演鑑賞者)を呼ぶためのホールをせつびするなどして観光資源にした。それのみならず、利賀の国際演劇祭「利賀フェスティバル」が村の知名度をあげ、イメージ作りに役立っている。

この例のように従来の開発思想には見られなかった地域イメージ作り、文化振興、観光、人材育成などソフト事業が多い。また、ハード整備では「ふるさとづくり特別対策事業」が実施され、これらの事業が地方公共団体の文化振興への起爆剤的役割を果たしたといえよう。

●地域からの文化情報の発信
インターネットを中心とした情報網整備とそれを可能にした情報機器の低廉化がある。

文化の観点から見ると、地域文化の鑑賞には、これまでその地域へ行かなければ見られなかったものが別の地域での鑑賞が可能になる。インターネットを通じた各地域への情報発信が、現在関心をもたれている。

<文化施設そのものがインターネットを利用している例>
「町田市立国際版画美術館」
http://www.city.machida.tokyo.jp/shisetsu/cul/cul01hanga/
「文化庁 芸術上方プラザ」(各文化施設をつなぐ文化情報ネットワーク)

しかし、対価で接触できること、直接的に認識しえること、情報の取捨選択が情報をみて安易に出来ることの観点から、人物交流も情報発信のために重要である。

2、地域文化に対する行政

●地域文化振興の歴史的改革
地域自らが、自らの町や村を潤いのある、また誇りにすべきものと考え、地域づくりのために行動していることでもあるが、国の地域おこし施策のそった新たな支援も大きく貢献している。過疎化の解消のために文化活動が手段として考えられている面があるのも否めない。

1970年代 「行政の文化化運動」・・・地域文化の推進が図られる
・文化施設(図書館を含む)の整備(芸術文化・文化財保護にとどまらず、生涯学習も含まれる)

1980年代後半 文化財保護関係以外の文化振興事務は知事部局に移る(知事が熱心に行政の文化化を勧めたこと、1960年代の公害が一段落して大きな行政課題として地域文化振興が比重をしめたことによる)
<知事部局で文化振興を行うことの利点>
1、知事の意向に沿って機動的な振興策が打ち出せること
2、予算的に大幅増が図れること
3、演劇・コンサートを行政側が積極的に行われるようになったこと
4、国の財政的・制度的な支援が得られやすいこと
<教育委員会が行うメリット>
1、文化振興の実際の担い手は教員が多いため、教育委員会の組織化が行いやすい
2、財政的支援・連絡・伝達が、文化庁→都道府県教育委員会のルートで行いやすい

●地域文化振興の状況
1980年代に、地方公共団体が支出した文化関連経費が非常に伸びている
。増加傾向は鈍ったものの、最近でも年間約30館も公立文化会館が設立されている。(ホールの大型化)
しかし、芸術鑑賞への動機は強いものの「近くで鑑賞したい演目が行われていない」という理由で鑑賞しない住民も多い。とりわけ市町村率施設ホールの活用が低調である。
<理由>
・芸術家の一極集中(ほとんどが東京に居住)、舞台芸術の約半数が東京に集中していることがあげられる。

3、地域の文化政策に関する諸制度

●文化芸術振興基本法と地方自治法による枠組み
地方公共団体の組織や運営について包括的に規定しているのは地方自治法である。個別列挙されていた事務が「地域における事務」として包括された。
「地域における事務」とは、行政区域外における事務を含むほか、住民福祉のために行う事務一般を指し、地方公共団体のほとんどの事務が該当する。法定受託事務も含まれる。

これにより住民の文化活動に対して広域で支援などが行われるようになった。執行機関として、地方公共団体の全てに教育委員会の設置が義務付けられ、諸掌事務は教育委員会が当たる。

●地方公共団体における文化行政
地方自治の原則に沿い、地方公共団体が文化に関する行政を行っている。国が議院内閣制であるのに対し、地方公共団体は大統領制である。

1)議会の役割
1、条例の制定
2、予算・決算の議決
3、地方税賦課の議決
4、財産の取得、処分に関する議決

2)策定機関
地方公共団体には、
・法律で義務付けられている審議会、委員会
・任意設置のもの
・地方公共団体独自の条例に基づく審議会
・国と同様に、首長・部長クラスへの各種意見を述べるための私的諮問機関
がある

審議会の構成員は学識経験者・当該地域の芸術団体・マスコミ関係者で県民の代表が加わっている県はない。連絡調整を主たる任務とする審議会では、各行政部局の責任者が中心である。
したがって、このような審議会では文化振興に関する基本方針の事務レベルでの調整を行っているに過ぎず、方針の策定は行われない。
審議委員会委員は非常勤であり、事務局が自己に都合の悪い案件は報告しにくいため、計画の実施までフォローすることが困難な状況にある。

3)実施機関
文化庁が対象とする文化にかかる事務は教育委員会が行うこととなっている。
・文化財の保護
・児童生徒に対する芸術教育
・生涯教育としての文化活動
・美術館や博物館の設置と運営
であり、
・生活文化
・地域景観
・地域文化振興
は首長部局で担当する

国レベルでは、一応文化庁が主体と鳴ってる事務も、県レベルでは教育委員会と首長部局にわかれ、さらに市町村レベルでは教育委員絵画行うと言う、事務連絡上複雑な構造となっている。

第6章 芸術文化の振興ーその意義と一般的な枠組みー

1、芸術文化振興の意義

●「民間芸術活動の振興に関する検討会議」の報告
1986年文化庁に置かれたこの検討会議がはじめて理念的な考えを提示した。
芸術は人間の本性に根ざした存在である(本質面)とともに、経済・社会にとって極めて有効である(効用面)ことを強調している。

●「文化審議会」の2002年答申
「文化を大切にする社会の構築について~一人一人が心豊かに生きる社会を目指して」
1、人間と文化~人間らしく生きるために
2、社会と文化~共に生きる社会を作るために
3、経済と文化~より質の高い経済活動の実現のために
4、科学技術・情報化と文化~人類の真の発展のために
5、グローバル化と文化~世界平和のために

2、芸術文化政策と芸術文化振興論の位置づけ

●芸術文化の定義と芸術文化政策
「一般的類型」
・芸術文化(文学・音楽・美術・演劇・舞踏・伝統芸能・映画など)
は文化の上部構造を形作る
・生活文化(茶道・華道・香道・礼法などの生活芸術、盆栽・盆石・錦鯉・料理・服飾・室内装飾などの生活全般にわたる文化)
・国民娯楽(囲碁・将棋・コントラクトブリッジなど健全な娯楽をさす)

●文化政策における芸術文化政策の位置づけ

文化の振興と普及
1、芸術の振興(文化の頂点の伸張)
a、芸術活動の基礎の整備(組織の形成、施設の整備、情報システムの整備)
b、芸術活動の奨励と援助(精神的支援、財政的援助)
c、芸術活動の場の確保
d、芸術家などの育成(研修、顕彰)
e、芸術の国際交流の推進

2文化の普及(文化の裾野の拡大)
a、地域文化活動の振興(基盤の整備、奨励・援助(精神的支援・財政的援助)活動の場の確保、人材の育成(養成・顕彰・子億歳交流の推進))
b、芸術鑑賞機会の確保(派遣公演、巡回展示)

第5章 文化芸術振興基本法と文化振興条例ー文化政策の法的基礎ー

1、文化芸術振興基本法

●文化芸術振興基本法の構成
前文 (法律としては珍しく前文がある)・・目的
第1章(総則、第1条~第6条)・・基本理念
第2章(基本方針、第7条)・・・基本方針
第3章(文化芸術の振興に関する基本的施策、第8条~第35条)
「文化芸術の振興と普及」第8条~第15条、第21条~第24条
「文化芸術の基盤の整備」第16条~第20条、第25条~第31条、第33条
「施策展開の基本姿勢」第32条、第34条、第35条

<制定の意義>
1、文化芸術の役割・意義について言及していること
2、文化芸術の役割について詳細な規定をおいていること
3、政府による法制上、財政上の措置などの義務付けを行っていること
4、政府による基本方針策定の義務付けと手続きの明確化を規定していること
5、基本的施策の内容として詳細な規定をおいていること

●文化芸術振興基本法の基本理念の構造
1、文化芸術活動を行うものの自主性の尊重(第1項)
2、文化芸術活動を行うものの創造性の尊重及び地位の向上(第2項)
3文化芸術創造享受権と文化芸術を鑑賞、参加、創造することが出来る環境の整備(第3項)
4、わが国及び世界の文化芸術の保護および発展(第4項)
5、多様なぶなk芸術の保護及び発展(第5項)
6、各地域の特色ある文化芸術の発展(第6項)
7、わが国の文化芸術の世界への発信(第7項)
8、国民の意見の反映(第8項)

●文化芸術振興基本方針の策定と文化審議会の役割
基本方針は文部科学省(大臣)が定めるのではなく、政府全体としてこれを定める=内閣が定める=閣議決定

基本方針は文部科学大臣が基本方針の案を作成する

案の作成に当たっては、文化審議会の意見を聞かなければならない

文化審議会は国民を代表する有識者から構成されている

2、文化芸術振興基本方針の性格
行政計画として位置づけられている。

●文化芸術振興基本方針の構成
<第1次基本方針>
「まえがき」
「第1 文化芸術の振興の基本的方向」
1、文化芸術の振興の必要性
2、文化芸術の振興における国の役割など
3、文化芸術の振興に当たっての基本理念
4、文化芸術の振興に当たって留意すべき事項
「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策」
1、各分野の文化芸術の振興
2、文化財などの保存及び活用
3、地域における文化芸術の振興
4、国際交流などの推進
5、芸術家などの養成及び確保など
6、国語の正しい理解
7、日本語教育の普及及び充実
8、著作権などの保護及び利用
9、国民の文化芸術活動の充実
10、文化施設の充実
11、その他の基盤の整備

●重視すべき方向と留意すべき事項
「重視すべき方向」
1、文化芸術の関する教育
2、国語
3、文化遺産
4、文化発信
5、文化芸術に関する財政措置及び税制措置
「留意すべき事項」
1、芸術家の地位向上のための条件整備
2、国民の意見などの把握、反映のための体制整備
3、支援及び評価の充実
4、関係機関などの連携、協力

3、文化振興条例
地方公共団体の文化関係事務の一般的な根拠は、地方自治法に求められる。なお、地方自治法では、教育・学術・文化に関する事務は教育委員絵画管理している。

●文化振興条例と文化計画
地方自治法は、地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を制定することが出来る。
文化振興条例を制定する意義は
1、文化振興の基本理念の明記
2、文化活動に対する財政的な支援措置
3、文化計画などの策定
4、審議会などにおける住民の政策策定への参加
これらはさらに増えていく傾向にある



第4章 文化法制と文化予算ー法制の体系と予算の構造ー

1文化法制の体系

●文化に関わる法制
1、文化に関わる基本法制(文化芸術振興基本法を基幹とする)
2、行政組織法の中の文化法制
3、文化に関わる個別法制

●行政組織法の中の文化法制
文化庁は文部科学省の外局として設置されている。外局は本省の大臣の一般的な総括のもとにあるが、これとは相対的に独立し、一定のまとまった事務を、その長である長官のもとに一体的に処理することが適当と考えられる場合におかれる。

●文化に関わる個別法制
1、文化の振興に関する法制・・芸術文化振興基本法
2、文化的所産の保存と活用に関する法制・・文化財保護法、著作権法
3、宗教行政の運営に関する法制・・宗教法人法
4、顕彰に関する法制・・文化勲章令、日本芸術院令、文化功労賞年金法
5、その他の関係法制・・文化施設に関する興行場法令、特別非営利活動促進法、民法の公益法人に関する規定
6、文化に関する国際規約及び条約・・経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、無形文化遺産の保護に関する条約、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約、万国著作権条約、実演家・レコード製作者及び放送機関の保護に関する条約

●文化芸術創造享受権
人々の生まれながらの権利

2、文化予算の構造

●国・文部科学省予算と文化庁予算
国の一般会計予算は2000年度から次第に減額し、2003年にやや増額されたが2006年には大幅な減額になっている。
文部科学省予算は2003年以降は毎年減額している。
文化庁予算は2000年度から着実に増額していたが、2006年に減額に転じた。

●文化庁予算の構造(分野)
文化庁の予算は文化財保護に多く比重がかけられている。文化財保護の中では、史跡などの保存・活用が大きな割合を占めている。

●文化庁予算の構造(使途)
予算面においては、文化庁の文化政策は直接的な方法によるよりは間接的な方法によっている

第3章 文化政策の基礎

その背景、形成過程と評価
1、文化政策の背景

●文化芸術振興基本法(2001年制定)は
・文化芸術を行うもの
・自主性の尊重
・創造性の尊重
を謳うとともに「このような文化芸術活動を行うもの」の自主的な活動を促している。

しかし、文化芸術の内容に触れることなくその振興を図ることは、実務的に大きな困難を伴う。限りある予算内で優れた芸術家を顕彰するためには必然的に評価を加えなければならない。
内容不関与の原則を担保する仕組みとして機能しているのが、文化芸術活動についての判断を有識者からなる第三者機関の審議・検討にゆだねるシステムである。

●「文教」政策の一環への位置づけ
文化は教育・学術とともに「文教」の括りの中に位置づけられるとともに、学術と並んで”創造”の領域を担うものと懸念されていると考えられている。
「教育はチャージ(充電)であるが、文化はディスチャージ(放電)である。しかし、文化は放電=発散したあげくに無に帰するのではない。教えを受けつつさらなる研鑽を積み、円熟の境地を求めようとする。優れて教育的・自己啓発的な活動である。

1980年代以降、「生活文化」全般を包み込み、”まちづくり”を念頭に置いた幅広いものとして展開されるようになった。

●日本文化の形成過程との関連
国内における「文化的中央」と「文化的地方」の解消が必要である。これには、文化格差の是正と地域文化の主体性・自律性の確立の両面が含まれる

●1980年代の時代状況
1960年代 高度経済成長・生活水準の著しい向上・公害、環境破壊
1970年代 石油ショック・経済の安定向上・環境の質や心の豊かさが求められる
1970年代後半 「地方の時代」の提唱 「文化の時代」
1980年代以降 「国際化の時代」

2、文化政策の形成過程と評価

●政策形成過程と政策決定
「政策形成過程の中核的プロセス」
1、政策目標の策定
2、施策の基本的方針の決定
3、施策の基本計画の策定
4、行政府への答申・建議

5、(上記を受けた)行政府の実施計画の策定
6、 実施計画の遂行(行政府)
7、 政策全体の評価・修正(行政府)
実施計画の段階では、当初予想しなかった問題が生じるのが常である。しかしこのフィードバックが充分に機能されてきたとは言いがたい。

「政策決定」
1、目標の設定
2、代替案の設計
3、モデルの作成
4、費用・効果の比較
5、仮説の吟味
6、目標の再検討
7、新代替案の開発

このような政策決定システムの科学的手法の導入は、国・地方公共団体ともに明確な形ではなされていない。
1、政策決定担当者が依然として勘に頼る傾向が強い
(価値観などの不確定要素ないし計量化が困難な要素を、操作可能な形で政策システムに組み込むこと)
2、政策決定において圧力団体や市民運動に代表される計量化が困難な要素の入り込む要素が多いこと
(これらの要素を取り込んで解析できる新たな定量的技法の開発を図ること)
3、政策決定システムに関する科学的手法が未熟なこと
(定量的技法の限界を補完する定性的な分析手法の開発を図ること)

●政策評価
基本方針は、総務大臣が審議会などの意見を聞いて作成し、政府が閣議決定により定めることとされている

●文化政策の形成過程
文化庁における文化政策の基本方針・基本計画などは
制作策定機関で審議・検討され、文部科学大臣ないし文化庁長官に対し提示される
「文化審議会」
国語分科会
著作権分科会
文化財分科会
文化功労者選考分科会
文化政策部会
審議会では実質的な審議は分科会・部会で行われ、答申となる。

その答申を受けて、文化庁で実施計画が策定される。最大の課題は予算であり、与党・野党への事前説明、財務兆曲との頻繁な折衛のあと、政府原案として確定され、国会の審議を経て予算として成立する。



第15章 共同の学問、共生の世界へ

■スチュアート

・フィールドワークに出かけて思うことは、必ず政治的な側面があることである
・先住民の全寮制の学校でイジメや性的被害を受けた子は親になると同じ過ちを繰り返す。そういう意味では歴史的なことだと片付けてはいけない。現在も継続して続いている事実だと認識すべきだ。
・民俗学者がすべきことは「正確な情報を伝えること」「啓蒙する責任がある」の二点である。

■すがの
何かひとつを取り上げて「これはこうだ」と言う正確さはいらない。しかし発言する側には「これだ」というものがないと発言しにくい。
難しい問題だ。

第14章 アイヌ語の現在と未来ー危機言語の維持と復興ー

1、はじめに

言語はそのアイデンティティを支える極めて大きな要素のひとつである。20Cも終盤を迎える時期になって、多くの言語が急激な速度で消滅しつつあることが明らかになり、逆にその対策が世界的な問題になってきている。

1、日本の少数言語としてのアイヌ語

現在、その話者として確認されている人は全て日本に住んでいる。その意味でアイヌ語は日本固有の言語である。

2、アイヌ語のたどった歴史
1)アイヌ人と和人の抗争の歴史
15C 本州から豪族が渡島半島西館に渡り、「館」(たてと呼ばれるとりで)を築く
1457年 コシャマイン戦争・・和人の勝利
1604年 松前幕府・徳川家康より黒印状(藩として地位を得た○前藩がアイヌ人との交易権を得る・・・不正が横行するようになる
1669年 シャクシャイン戦争・・和人の勝利(アイヌ人は和人と自由に交易できなくなり、和人の奴隷となる)
1789年 クナシリ・メナシ蜂起・・和人に鎮圧される

2)明治以降
1872年 「地所規則」「北海道土地売貸規則」
(和人のみ従来から所有している土地の私有化を認め、アイヌ人の土地は「無主の土地」とされた。
大量の開拓民が北海道に流入し、シャケやシカを乱獲する
1889年 シカ猟の禁止
1898年 シャケ漁の禁止
これによりアイヌ人は貧窮に追い込まれる
1899年 北海道旧土人保護法が制定される
・アイヌ人は全て和人となる教育を施されえる
・アイヌ人の歴史や文化を無視する形で差別意識をもたらした
・アイヌ文化を子供に教えない親も出てきた

3、アイヌ語復興運動の展開
1)個人的な活動
知里幸恵「アイヌ神謡集」
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2)組織的な活動ー北海道ウタリ協会
http://www2.edu-japan.net/utari/sub3.html
3)アイヌ文化振興法の成立とアイヌ文化振興・研究推進機構の活動
1997年 アイヌ文化振興法が成立されたが、民族としての社会的・経済的基盤の整備という点についてもまったく触れておらず、その意味で極めて不十分な法律である。しかし、この法律を足がかりにして、次の人材育成に役立てることは可能である。

<アイヌ語関連事業>
アイヌ語上級話者育成
アイヌ語指導者育成
アイヌ語ラジオ講座
アイヌ語弁論大会
親と子のアイヌ語教室

4、アイヌ語の未来と民族としてのアイデンティティ
日常のコミュニケーションの手段としてすでに機能しなくなったアイヌ語を、なぜ苦労して身につける人がいるのか

<和人>
・アイヌに対してのあこがれ
・アイヌ人への謝罪
・学問的興味
<アイヌ人>
・親の言葉を覚えたい
・なぜかわからない
(中年になるまでアイヌと呼ばれることを嫌って、関わりを避けていたがあるとき急に覚えたくなった)
これはアイヌ人としてのアイデンティティのほうがアイヌ語を呼び求めているといえる。このような人がいる限り、民族も言語も容易には消滅しない


第13章 先住民族と憲法

1、はじめに

○国際ルールの意義と限界
国連総会は1993年を人権・環境・発展・教育・保健などの分野で先住民族が直面している問題に向けた国際協力の強化を目的とする「世界の先住民の国際年」と定め、1994年から10年間を「世界の先住民の国際の10年」とした。

これには主権国家側の抵抗も強く、国際の10年には総会による採択にいたらず、国連は10年の延長を含め継続しているが、採択されたとしても宣言には主権国家に対する法的拘束力はない。

○先住民と国際法
アメリカは憲法において、ニュージーランドは条約において先住民族の権利を定めている。しかし、国内に先住民族が存在しているにも関わらず憲法も条約もない国もある。日本もそうである。
憲法を改定することが望ましいがなかなか難しい。

2、権利保障のアプローチ
特別法アプローチ

○アメリカ合衆国
先住民とアメリカはともに主権を有する国と国との関係とされているが、インディアンは一定の制約を受ける。合衆国がインディアン部族に対して保護責任を負うものとするものとされているからである。
先住民をほかの国民と区別して取り扱うことは憲法違反であると以前から取りざたされており、実際の裁判でも違憲であると言う判例が多々で出ている。

○カナダ
1982年、新憲法によって「インディアン、イヌイトおよびメティス」をカナダの先住民と認めるとされているが、先住民の権利に条約等によって確認されている一定の権利のほかに何が含まれているのかは明言していない。

○ニュージーランド
1890年に先住民族マオリとイギリス政府の間で両母国語の条約が制定されたが、条約の正文の理解に食い違いがあったことや、条約ではイギリス政府は法的拘束力がないことから、マオリの権利を十分に保全することは出来なかった。そこで1975年に条約を国内に施行するための「ワイタンギ条約」が制定される。

人権アプローチ
上記のような特別な憲法規定・条約がない場合に先住民族の権利を実質的に保障するアプローチを「人権アプローチ」と言う

これは主流社会には受け入れられやすいが先住民の権利の主張についてカバーできる範囲は限られている。

3、日本と先住民族
1)アイヌ門族の法的位置

○第3の途の可能性
・アイヌ民族と日本政府の間には条約は存在しない
・日本国憲法においてもアイヌ民族の権利や地位に特別な規定は置かれていない
・「法の下の平等」をうたっている限りアイヌ民族に関する法律は法案の段階でつぶされるであろう

○北海道旧度人保護法
1899年、アイヌの「救済」を名目にアイヌ一戸に15000坪の土地を無償給与し、農民としての生活を安定させ、旧度人学校によって日本語を教え込む総合的立法を行った

しかし、北海道で15000坪は農業を行うには不十分な大きさであり、農耕不適切地も多かたので、アイヌの生活水準は低いままであった。
第二次世界大戦後教育が全国に普及したため福祉・教育の規定は廃止され、給与地の譲渡は北海道知事の許可を必要とするという規定のみ残った。

○新アイヌ新法への動き
「アイヌ民族の尊厳を確立するため、その社会的地位の向上と文化の保存・伝承・及び発展を図ること」を目的とする社団法人北海道ウタリ協会が旧土人保護法の廃止と新しい法律の制定を求める運動が始まった。

○有識者懇談会報告書
「少なくとも中世末期以降の歴史の中で見ると、学問的に見ても、アイヌの人々は当時の和人との関係において北海道に先住していたことは否定できない」
「わが国からの分離・独立など政治的地位の決定にかわる自決権や、北海道の土地、資源などの返還、保障ににかわる自決権という問題を、わが国におけるアイヌの人々に係わる新たな政策の展開の基礎におくことはできないものか」

○アイヌ文化振興法
「アイヌ文化の振興及びアイヌの伝統などに関する国民に対する知識の普及及び啓発を諮るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせてわが国の多様な文化の発展に寄与すること」と言う法案が出された。

この法律が90年代にいくつもの奇跡が重なり、日本における異民族の存在を公認した空前の法律として「その苗を大きく育てる」努力が肝心である。

2)二風谷ダム判決

○判決の概要
政府がダムを建設することで、民族文化にとって重要な施設などを破壊するなど、アイヌに対する充分な配慮を行わなかったとして、採決を違法とした。

○先住性の意義・・・「人権プラスアプローチ」
多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ少数民族が居住していて、その後右の多数民族の支配を受けながらも、なお従前と連続性のある独自の文化及びアイデンティティを喪失していない社会的集団

4、先住民族の権利と憲法
1)文化亨有権
○先住民族と文化
文化とは他の同様な集団と区別される要因としての特定社会的集団の物的・精神的な活動あるいは生産物の総計

○リベラリズムと先住民族
リベラルな個人主義の根底にある個人の選択の自由が真に意味あるものとなるためには、その人に対して理解可能な選択肢を提供する文化の存在が不可欠であり、その文化とは人を育んだ母文化だ。
少数民族に属する個人にとっては自らが属するその民族の文化を享受することこそが必要である。

○文化の多様性(意義)
・多様な文化を持った興味深い世界を作り出すこと
・多様な文化の存在は、社会が新しい状況への対応を迫られたときにそれを可能にする選択肢を提供することが出来る点にある

2)民族の先住性と統治への同意
少数民族の中でも多数民族の統治に対する同意があるかどうかで権利保障の程度が変わるのは、先住民族と言う存在そのものを憲法に根拠付けることが困難な日本においては巧妙な論理である。

第12章 先住民運動ー過去・現在・未来ー

1、先住民運動の歴史(15C末~1950年代)
ヨーロッパ人が先住民を見ていた矛盾した2つの見方
1、文明の束縛から解放されている自由な存在
2、残虐・野蛮な未開人

2、新大陸の植民地化と先住民(16C)

■イギリス(コモン・ロー)
正義や慣習を尊重する立場から救済を可能にする。
英米法伝統の法律では救済できない場合でも、判例によって古くからの慣習に基づく所有権などの法的根拠が成立するとされる。日本の入会権、入浜権などがこれに類似する。多くの先住民の権利要求ではこのコモン・ローに根拠を置く

■フランス
先住民の主権を最初から認めない。先住民との間に同盟関係を結んだが条約はなし

■スペイン
先住民の主権を最初から認めず、同盟も条約もなし。
・プルゴス法・・・スペインの征服者たちをドミニコ会士が、資源略奪のために過酷な労働を課していると国王に告発したことにより発布された法律。
・新法律・・・プルゴス法を補充するために、先住民の奴隷化と過酷な労働が禁止され、貢納が禁止された法律
両法律ともに入植者の激しい抵抗に会い、実現されず、有名無実となる。

イギリスの措置、スペインの措置はいずれも保護は建前であり実際は都合が悪くなれば同盟を解消したり、条例や条文を無視した。

<1763年 英王布告、英王布告をめぐる判決>
7年戦争ののちフランスが放棄した北アメリカ植民地はイギリス領になった。フランスと友好関係にあったインディアンはイギリス軍を追い出そうとした。結局インディアン軍は敗れたが、イギリスは蜂起が広がるのを恐れて王国布告を発布した。
1)イギリス政府の許可なくして入植民と商人の先住民地域への立ち入りを禁止
2)すでに入居している入植民の退去
3)一切の先住民の生活領域の売買と譲渡はイギリス政府のみが有する権利である
4)法的措置の失効でない限り先住民の権限は存続する

<1763年英王布告をめぐる判決>
アメリカ最高裁判所長官ジョン・マーシャルは先住民の権原を布告に基づいて定義した。

西欧の「発見」以前に先住民は独自の統治権を有していたと解釈し「無主地」を否定したが、イギリスの支配が先住民の生活領域に及ぶのに伴い、先住民の統治権に制約が加えられ、最終的な権限はイギリス政府、主権および義務と責務はを引き継いだアメリカ政府に属する

その結果、カナダの先住民には自治権はなく、先住民の権利は一方的に連邦政府の立法措置に消滅させられると言う解釈が1970年代まで続くことになった。

3、1950~1970年代の先住民運動

第二次大戦後、少数民族やエスニック・マイノリティの権利回復、公民権運動、植民地解放が率先して勝利国であるアメリカ・カナダ・オーストラリアから提唱されたが、こういった国こそが問題を抱えていることが次第にわかってきた。
(アメリカは暗号がバレないようにインディアンを戦争に積極的に起用しの母国語(ナホバ語)を使わせた。このようなことから先住民の側から不満が出て問題が明るみに出た。

国際機関の関心
・世界知的所有権機構
・国際保健機関
・国際労働機関
・国際復興開発銀行
・サバイバル・インターナショナル(イギリス)

その結果まだまだではあるが線y住民の権利や権原を許容し保護する政策が世界的な広がりを見せるようになる。





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