15.新しい社会教育の形を考える

2.社会教育の役割:変革と安定
これまで、変革に注目され、安定を志向した社会教育の役割は、さほど注目されてこなかった。NPOや旧来の青年団や婦人会への社会教育行政のまなざしは変わってきている。

「新しい公共」の担い手として、学習機会の媒体としてNPOが注目される。安定志向の学習よりも、変革志向の学習を重視することは、それなりの意味がある。

ただし、社会の機能を考えた場合、安定志向の学習とその支援は必須である。とくに、公共的課題・社会的課題・現代的課題は、社会の自立に関わる課題であり、行政が提供すべき学習機会として設定される必要がある。

行政が、採算性を再重視するという本末転倒なことが起きているが、行政の本来の役割は、社会の安定的存続にある。特質・特性を生かして原点に戻れ。

3.社会教育遺産の重視
教育実践の世界では、様々な工夫が行われているが、これは試行錯誤してきた結果である。今日、これらの表面的な部分だけが模倣されているのは残念なことである。本質に迫ることができず、技法ばかり模倣される。

社会教育とは、「末裔」での人間関係こそが重要である。職員と学習者の関係でいえば、単に職員であるだけでなく、人間同士ともに悩み、行動する存在が欠かせない。それを無視して、目に見える「成果」や「理論的」な説明を追求することがいかに空虚なことか。これは「効率」という発想が広がった結果である。社会教育領域で積み上げてきた過去をキチンと知れば、未来への道は見えてくる

■「発掘」について
すでにあげた事例・工夫は、現在にまで繋がっているわけではない。その時その時に、その役割が消滅し、歴史の中に埋もれていく。しかしまた、何かのきっかけで同様な事業が考えられ、新しい工夫として生起する。これを「発掘」と考えればいいのであろう。

この場合、ただ仕事をすればいいという職員が担当者になると組織での蓄積は危うい。制度化・組織化は、社会教育にとっては諸刃の剣である。社会教育の領域では、期間限定・地域限定がむしろ常態であり、通時代的な活動・事業が優れているという発想をすてるべきである。

5.社会教育の再認識
■地域教育とは
地域運営学校(コミュニティ・スクール)とか、学校支援地域本部などの施策が展開される中、地域で学校を支えるという流れで、地域教育という語が生まれた。

社会教育の継続性と社会教育の継続性を比較してみれば、学校教育では、組織が継続しメンバーが交代するのに対し、社会教育においては組織が変容しメンバーが継続するということもしばしば見られる。社会教育領域の諸実践では、決まって「マンネリ化」が話題となり解決すべき課題となるが、それは、社会教育自体が継続性・永続性を前提としていないと考えれば、自然なのであろう。このように社会教育はその危うさゆえ、存在意義をもっているといえる。




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モーツァルトがあなたを癒す~謎解き!音楽療法~

【音楽療法とは】
①音楽がもつ生理的な働き(リズム)
音楽を聴いて身体を動かす⇒筋肉運動が活発になる

②音楽がもつ精神的な働き
懐かしい曲を聴く⇒心が穏やかになる

③音楽がもつ社会的な働き
音楽を介して知らない人同士が仲良くなる[/引用]
音楽療法とは、これら3つを「意図的に」もちこむこと。娯楽や単なる音楽鑑賞ではない

【音楽療法の音楽の種類】
①心地よい音楽を聴く・・・受動的なパターン
②楽器の演奏など・・・能動的なパターン
これらを組み合わせると色んなことがおこる

【モーツアルトを聴いた場合におこること】
血圧が安定する・内耳の働きが改善する。便秘の改善・安眠・ガン患者の免責細胞の機能を高める・花粉症(アレルギー)の改善(血行がよくなる)

【研究のもとになる理論】
トマティス理論(人間の神経にある周波数の音をあてると改善する)が真実であれば、副交感神経(身体がリラックスする神経)に音楽が影響を及ぼすことが可能なのではないかという仮説に基づき研究をする。

【研究の仮説】
副交感神経が分布している場所および神経の出口(延髄)と脳下垂体に波及する音楽の周波数をみつけ、エビデンスを得れば、音楽として交換神経にブレーキをかけることができるのではないか。

【研究の方法】
「音」「ピッチ」「倍音」「テンポ」「ゆらぎ」で最適な数値を示し、モーツアルトの曲を選別する。

【研究の結果】
①K.625



K.458「狩り」第2楽章:3500~4200という高い周波数が多く含まれている・弦楽器の倍音が豊富である⇒血管が拡張するので手が暖かくなる

ディヴェルティメントK.136第2楽章:ビブラート(ゆらぎ)が多い。一定のフレーズ・テンポの繰り返し⇒副交感神経を刺激する。涙腺を刺激する
ただし、モーツアルトだけが効果的というわけではなく、効果的な曲がモーツアルトに多いということである。

14.社会教育の専門的施設:青少年教育施設・図書館・博物館の機能

1.青少年教育施設の位置づけと役割
(1) 青少年教育施設という社会教育施設
国立青少年教育振興機構という独立行政法人が運営している。現在の青少年教育施設は、1959年以降に設置された。青少年に対し、学校とは異なる教育機会に接することによって、学校とは異なる教育効果を期している施設である。

(2) 青少年教育施設の運営とその課題
運営についての批判・・・利用率の低さ

1995年「より魅力ある施設に生まれ変わるために(報告)」
・団体宿泊訓練の重視から自主性をを育てる運営への転換
・先導的事業や調査研究を充実させて成果の普及をしつつ学社融合をめざす
・地域のネットワークの中心的な存在としてのリーダーシップを発揮

2009年・・・国営から民営へという意見が出る

「今後の国立青少年教育施設の在り方についてー新たな視点にたった体験活動の推進についてー」
①ナショナルセンターとしての機能を強化すべきこと
②効果的・効率的な設置配置などを目指すべきこと
③「新しい公共」型(民間・大学・自治体との協働)の管理運営をめざすべきこと

いずれにしても、その必要性は認識されているが、積極的な存在をアピールしてこなかった。近年、実証的な調査結果が公表され、体験活動の意義を再認識する必要性が強調される動きがある。

2.図書館・博物館の位置づけとその役割
(1) 図書館・博物館という社会教育施設
図書館や博物館は社会教育施設である・・関係者は反発する。しかし、図書館は選書しているし、博物館は収蔵品・資料を選択している。これは、そのような価値を提示・伝達するか、という教育と同じ原理を基本にもっている。これがなければ、図書館と書店、博物館とテーマパークの区別がつかない。

(2) 図書館・博物館の運営とその課題
ボランティアの存在。図書館・博物館は、ボランティア専門の仕事がある。このことから、ボランティアは、労力削減の安上がり施策ではない。専門的職員の専門性に関して、モノ(図書館資料・博物館資料)の専門性以外に、ヒト(ボランティア・利用者)に対する専門性が必要である。

◆博物館と学校との関連
博物館の利用を、学校単位で行うことは悪いことではないが、学校での利用は学校教育のカリキュラムに則った利用である。博物館は、社会教育施設として存在するのであるから、例えば学校では優秀ではない子が気持ちよく過ごせる空間であったり、他の学校の生徒や大人と接することが本来の姿である。学校単位の利用は、博物館本来の利用ではなく、博物館のもつ可能性の一部である。


13.社会教育の総合的施設:公民館と生涯学習センターの機能

公民館について理解することは、社会教育そのものについて理解することに繋がるし、そのあり方を考えることは、社会教育のあり方を考えることである。

1.公民館の位置づけとその機能
(1) 公民館の成立と基本的役割
公民間は、第二次世界大戦後に構想された。寺中作雄はいう、「多方面の機能をもった文化施設」という。
第1に「自己教育」「相互教育」の場である
第2に社交娯楽機関である
第3に町村振興の機関である
第4に産業振興の機関である
第5に青年の育成に関心をもつ機関

(2) 公民館の制度的位置づけ
公民館の職員については、教育機関であるとするなら公民館主事が専門的職員として位置づけられるべきであろうが、これまで指摘してきたように、制度的にはそのようになっていない。
「公民館」という語は、その使用に対して自由であるため、単なる地域の集会施設になっている場合も多い。

(3) 公民館の役割と意義
公民館の活動は、一方で行政によるサービスという側面もある。しかし、公民館には、その活動が、地域住民・学習者・利用者によって担われている部分が大きいという特質もある。地域住民は、単にサービスを受けるだけでなく、サービスを作り上げる側にもなりうる。

公民館活動を行政のサービスの一環としてのみ捉えず、点検・評価を組み込んだ地域住民と職員の活動であるととらえるということは、その点検・評価のプロセス自体が公民館活動の重要な構成要素となっている。

2.コミュニティ・センターという施設と公民館
松下圭一「社会教育の終焉」・・・地域施設としては、公民館という施設は不要で、コミュニティ・センターが適している。

コミュニティ・センターは、首長部局に属する市民の自治的な活動拠点として存在し、教育機関・社会教育施設ではないが、公民館との間で、専門的職員の問題、住民の参加の確保の問題が議論の焦点であった。

今日、教育委員会の位置づけの見直しの動きが急速な状況で、首長部局と教育行政との関係、その中で、社会教育・社会教育行政の位置について、多様な側面から現実と理念とを峻別しながら検討することが必要である。

3.生涯学習センターの位置づけとその機能
生涯学習センターは、市町村レベルの公民館ではなく、都道府県レベルの社会教育の総合的な施設である。
①生涯学習情報の提供および学習相談体制の整備充実に関すること
②学習需要の把握および学習プログラムの研究・企画
③関係機関との連携および協力および事業の委託に関すること
④生涯学習のための指導者・助言者の養成・研修
⑤生涯学習の成果に対する評価に関すること
⑥地域の実情に応じて必要な講座を主催すること

生涯学習センターは、1970・80年代以降の広域的な行政対応が必要な地域政策のなかで出てきた発想である。人々の諸活動・学習活動が、広域化・多様化したなかでの社会教育領域での対応であると考えられる。

12.社会教育施設の役割

1.社会教育施設とは何か
図書館・博物館・青年の家その他の社会教育施設・・・2008年教育基本法
公民館・・・社会教育法
図書館・・・図書館法
博物館・・・博物館法

社会教育施設は、人々を教育しようとする意図が明確な施設であるが、教育は価値観の押しつけではないことを理解しておかなくてはならない。

カルチャーや個人教授所など民間の営利的に提供されている学習機会は、社会教育施設ではない。社会教育施設は、行政によって設置され運営される施設を指す。

2.社会教育施設の構成
・物的側面・・・建造物を中心として、設備・備品や図書館における書籍などの図書館資料、博物館におけり収蔵品を指す
・人的側面・・・社会教育施設の職員
・機能的側面・・(例)公民館の講座の実施、学習相談、情報提供など
どれが欠けても、十分な社会教育施設とは言えない。

3.社会教育施設の現況と諸問題
(2) 社会教育施設の職員
・公民館・・・公民館主事
・図書館・・・司書、司書補
・博物館・・・学芸員
博物館を除き、必ず置くとは決まっていない。また、図書館館長は、規制緩和で司書の資格を持たなくてもよくなった。

(3) 社会教育施設の運営への住民参加
・公民館・・・公民館運営審議会
・図書館・・・図書館協議会
・博物館・・・博物館協議会

■指定管理者制度のもとにある施設の運営審議会・協議会は、設置者である自治体に対して責任をもって関わるのか、活動が、委託されている指定管理者の利益にならないかを検討されなければならない。

(4) 社会教育施設と利用料金
・図書館・・・図書館法17条で、いかなる対価も徴収してはならない
・博物館・・・博物館の維持運営のためにやむおえない場合は、必要な対価を徴収することができる
・公民館・・・規定なし
規定がないから有料でもいいということではない。無料であることを求められている。

11.社会教育における連携

1.連携という発想
学校教育に対してさまざまな機関などが協力し、「社会総ぐるみ」で子どもの教育を進めていくことを目的としている。

2.連携の意義と限界
連携とは、時間・期間限定的な存在であり、プロジェクト追求・目的達成のための手段として位置づくと理解することが自然であろう。

■連携が注目される場合
①それぞれの機関が自律的になっているうえで連携が必要な場合
②個別の機関などでの対応では困難が生じているから中心になる機関を柱にした連携が必要になったという場合

■注意点
①社会教育における行政と関係機関・団体などの連携という限定で考えてみた場合、行政が、本来自ら展開すべきである社会教育事業を、主として民間の関係機関や団体に連携という言葉を用いつつ任せるのであれば、その意義は、単なる行政の安上がり施策になる。
②連携について、単一の中心があるような形が採用されることにも注意が必要である

■考えておくべきこと
①連携が解消された場合どうなるかということを考えておくこと
②それぞれの機関・主体が自律的な活動をすること

3.学校と社会教育の連携
「学社連携」と「学社融合」
「学社連携」・・・家庭教育・学校教育と社会教育との連携で提起された
「学社融合」・・・国立青少年の家が魅力的な施設に生まれ変わるために提起された
しかし、この差は明確ではない。

具体的には、学校側が施設(図書館・博物館・青少年の家)を利用することをであるが、強制的な学習であり、窮屈である。



10.社会教育における参加

1、社会教育の領域で参加をどう考えるか
参加の議論について
①学習活動の開始、学習活動への参加に関する相・・・関係者の関心をひくものではない
②学習の機会保証・・・昔から社会教育関係者の関心をひく
③学習場面・学習活動運営における学習者の関与
④ボランティア活動への注目
これらは、自治体ごとの対応に明らかな差がある

2.制度としての参加
(1) 公民館運営審議会
地域の住民の意見を公民館の運営に反映させるルートを確保する意味で、制度化された参加であり、運営委員は行政委託委員である。
1999年の「地方分権推進一括法」により改正される
①運営審議会が任意設置となる
②構成が、学識経験者や諸団体の団体であったものが、関係者となり緩和される
③教育委員会は、事前に公民館の意見をきく必要がなくなった

(2) 社会教育委員
独任制の行政委属委員である。公民館運営審議会の委員が、具体的な教育機関に近いところで地域住民の声を反映するルートであったのに対し、社会教育委員は自治体の立案に立ち会い、行政が担う社会教育の方向づけを行う役割が与えられている。
2008年の補助金に関する改正があり、社会教育委員がいなくても補助金について話し合うことができることになった。社会教育委員がいらないのでは?

しかし、社会教育委員は行政の委属であることから、その活動は行政の庇護のもとにあり、活動も年に数回だと役に立たない。

3.参加体験型学習をめぐる問題
ワークショップの手法を取り入れた学習法であり、自発性を基礎とした参加の価値が高く位置づけられている。しかし、想定されている「体験」は、意図された体験・企画された体験である。
実は、「参加体験型学習」の意義は、社会教育における学習支援者・職員が気づくかどうかという点に求められる。

学習支援者・職員として求められる社会教育とは何か、社会教育は何のために存在するのか、社会教育はどうあるべきか、という問いに答えるために参加体験学習が存在している。

■参加体験型学習の問題点
①宣伝される参加体験型学習が形式的なものになっている
②学習者像に、成長という観点が希薄である
③宣伝される参加体験型学習は、表面的な、技術的な模倣であり思想に欠いた存在になっている

■どのように参加体験型学習を取り入れるか
テーマに迫るためにはその技法が必要だからという理由がなければならない。「参加体験型学習」を推進する人は、人間的に魅力を持つ人でなければならない。

プロフィール

Mikami Kako

Author:Mikami Kako

おことわり

保育士・図書館司書に関しては、旧システムによるものなので、現在のもの科目編成や内容にずれがあります。放大についても閉講科目が含まれます

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