15.市民自治の展望と社会科学の責任

第1部(1~3章)
市民自治の理念を概観し、市民自治を社会科学という学問を通じて探求する意義を確認した

第2部(4~8章)
政治学者が市民自治の基本技術を論じている

第3部(9~14章)
社会調査を専門とする社会学者、NPOやファシリテーションの現場で活躍する実践家、そして、行政訴訟を専門とする行政法学者が、応用的な市民自治の技術を論じている
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14.市民訴訟をつうじた公益擁護

1.市民訴訟の基礎理論
市民訴訟・・・市民が市民としての資格において裁判所に提起する公益擁護のための訴訟

■裁判所の役割
①法律上の争訟(私的な権利救済をめぐる争い)を解決すること
②法律において定める権限の行使
法律上の争訟として市民訴訟を提起することはできないが、私益の追求をつうじて、結果的に公益が保護されることを期待する訴訟は可能である。

2.公益と私益の区別ー客観訴訟を理解するために
私益とは、個々の市民という主体に帰属している利益である。例えば、自宅近くに公立図書館がある場合など。自分は便利だが、自分のために図書館があるわけではない。

■主観訴訟と客観訴訟
法律上の争訟としての訴訟は主観的利益の保護救済追求することになる・・・主観訴訟
法律において定める権限としての訴訟は、客観的利益の保護を目論むものになる・・・客観訴訟

3.選挙訴訟
事故の利益とは関わりなく選挙人であるというその1事に基づいて、裁判所に選挙の無効を訴えることができる

4.住民訴訟に先立つ住民監査請求
地方公共団体における抗菌の支出や財産の管理、契約の締結といった「財務会計行為」に違法がある場合に、その是正や保証を要求する訴訟

5.住民訴訟の仕組み
当該地方公共団体の長・議会などに対して是正などを勧告したが、期間内に是正が行われなかった場合、住民監査請求を行った住民は、地元を管轄する地方裁判所に対して、住民訴訟を提起することができる。住民訴訟の仕組みは、それが公共の保護を追求するものであるがゆえに、制度上の細かな配慮が必要となり、複雑である。

6.市民訴訟の展望ー主観訴訟の利用可能性
住民訴訟は、役所組織内で処理され明るみになりにくい公金の支出を争う手段として、実際に活用されている。

■主観訴訟の種類
抗告訴訟・・・行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟
当事者訴訟

13.政府情報へのアクセス

1.「知る権利」について
内閣「特定秘密の保護に関する法律」案を衆議院に提出。しかし市民の間には、「国民の知る権利や報道の自由が侵害される」という意見があった。では、「知る権利」とはなんだろうか。
ここで注意すべきことは、「情報を広く世の中に公開する」ということと、「特定の誰かに対して特定の情報を提供する」ということの違いである。

2.行政機関情報公開法
平成11年「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」は、「誰が」「誰に対して」「どのような情報を請求できるのか」を明記している。

ただ、現在は個人情報保護の仕組みが制度化されており、平成15年では、ある人に対して政府が保有する情報を本人に開示すること、およそ政府の保有する情報を公開することとは、法制度上区別されている。

国民主権のり理念とは、国民が政府の諸活動に対して受身の態度を取るべき存在ではなく、主体的・能動的に政府を動かしていくべき政治の主役であるという考え方である。

3.開示請求の対象となる「行政文書」
多くの行政法規では、その法律でも用いる特殊な言葉の意味を、第1条の冒頭部分で説明している(定義規定)。ところが、行政機関情報公開法だ2条1項では国の行政機関しか含まれておらず、市区町村・都道府県は含まれていない。地方公共団体が保有する情報については、この法律ではなく各地方公共団体が制定する情報公開条例に基づいて開示請求することになる。

行政文書の範囲は、「行政機関の職員が、職務上作成・取得した」という点が重要なのであって、文字・画像・映像は問題にならない。また、「職員が組織的に用いるために保有している」という点が重要である。したがって、個人の記憶メモや請負業者の計算書などは対象外である。

4.不開示事由とはなにか
「不開示」・・・開示を否定する
「部分開示」・・・一部を墨消し状態
「存否応答拒否」・・・所有しているかどうかすら教えない

■不開示情報
①個人情報
②営業上の秘密
③外交・安全情報
④治安維持上の秘密
⑤意思形成過程情報
⑥公共事務事業(監査・取締)

個人情報が不開示であるのは、プライバシーを守るためであるが、実際にはプライバシー情報に限定せず個人が識別できる情報を幅広く不開示にしている。あまりにも不開示の範囲が広すぎるのではないかという懸念がある。

12.ファシリテーション

1.ファシリテーションへの誘い
■ファシリテーション・・集団による知的相互作用を促進する働き
参加者が主体性をもって容易に活動できるように支援し、参加者の相互作用でうまく活動が進むように促していくのが、ファシリテーションの機能である。これは、様々なことを容易にして人々の言葉や気持ちなどを引き出す力でもある。

■ファシリテーター・・司会者でも知識を一方的に進める教師でもない。場を作ってプロセスを交通整理し、人々の活動が容易になるようにすることがファシリテーターなのである。

2.ファシリテーションの4つのポイント
(1)場作りの主催者として行うべき「準備」
想像力をたくましくして、場で何が起こりそうかということをあらかじめ予想しておくこと
①目的の確認
②必要な素材は目的に照らして準備しておく
③やるべきことの優先順位・時間配分・終了時間は強く意識しておく
④参加者が進行・記録・タイムキープと役割を分担しておく
⑤その人が置かれている立場や背景を十分意識しておく
⑥机や椅子などの空間の配置・・・話やすい柔らかい雰囲気作り
⑦ホワイトボードやプロジェクター、スクリーンの準備
⑧時計、その日の時間割、会議ルール
⑨模造紙、水性マーカーセット、マグネットなど(共同作業に必要)

(2)お互いの想いを聴きだす「話し合い」
傾聴が重要。

話し合いの3つのモード
会議対話議論
目的交流・共有探求・発見結論・合意
状況おしゃべり
(井戸端会議)
炉辺の語らい
(哲学・思索)
各種会議
(交渉・ディベート)
やり方・結論を出そうとしない
・理解よりも共感


・結論を出そうとせず、探求を続ける
・判断を保留し、対立を恐れず、新たな考えを出す
・意見をぶつけ合い、よりよい答えをだす
・全員が納得する合意を作る


(3)お互いの想いをかみ合わせる「可視化」
参加者の発言内容や話し合いのプロセスを書き出し、そこに広がる文字や図を見渡していくことで自分たちの話し合いの立ち位置がはっきりと見えるようになる

(4)合意形成への道筋
準備、話し合い、可視化のプロセスにおいて様々なことをあわせて積み上げていった結果として問題解決や合意形成に行き着く。勘違いや取り違い、誤解などに気づいた時には随所で「確認」をとって合わせていく。回数を重ねていく中で足並みが乱れそうな時には、それまでの内容の記録などを基に「振り返り」を行うとよい。



11.NPO法人のつくり方

1.NPO法人制度
(1)NPO法人制度の改正概要とあゆみ
2012年の法改正で、特定非営利活動分野に3分野が追加され、20分野になった。また、内閣府の認証事務が、都道府県や政令都市に移管された。インターネットによる情報公開も推進される。

(2)認定NPO法人制度の拡充
法改正等によって、NPO法人が認定NPO法人になるための基準が大幅に緩和された。
3000以上の寄付を100人から集める事によって認定要件がクリアできるようになった。

認定NPO法人となるための基準
①パブリック・サポート・テストに適合すること
②事業活動において、共益的な活動の占める割合が50%未満であること
③運営組織および経理が適切であること
④事業活動の内容が適切であること
⑤情報公開を適切に行っていること
⑥事業報告書などを所轄庁に提出していること
⑦法令違反・不正行為・公益に反する事実などがないこと
⑧設立の日から1年を超える期間が経過していること



(3)他の法人制度との相違

NPO法人一般社団法人
設立時認証主義準則主義
(登記だけで設立)
社員10人以上2人以上
役員理事3人以上
幹事1人以上
理事は1人以上
幹事は置かなくても良い
情報公開事業報告書・活動報告書など
を所轄に提出。
事務所に据え置く
なし
基金制度なしあり
収益目的の事業事業に支障がない限り可能制約なし
収益事業課税収益事業課税
それ以外は全課税
税均等割収益事業を行っていなければ免除収益事業に関係なく課税
登録免許税非課税課税
基本的な考え方市民参加に力点が置かれた法人。行政とはパブリックな関係勢の優遇のない簡易な非営利法人制度


3.NPO法人を作る4つのポイント
(1)目指す未来としてのミッションを確認する
行政から補助金を受ける、委託事業の契約の主体となる、公共施設の指定管理者になる

(2)市民参加の主体であるボランティアを支える
NPO法人の運営に欠かせないのが「人材」と「資金」である。

(3)善意の循環としての寄付文化を醸成する
ファンドレイジング(NPOなどが事業に必要な資金を社会からあつめる手段)

(4)多様な手法で面識を紡ぎなおす
このような人材や資金は、外部との関係の中で獲得していく

ボランティア活動であれ、寄付活動であれ、実際にNPO法人を運営することであれ、社会でおこっていることに関心を寄せ続けていくことが、市民自治への参加につながっていく。



10.情報のリテラシー(2)

社会調査の目的には大きく記述と説明の2つがある。

1.調査の目的~記述と説明
■記述・・・対象が「どのようであるのか」という状態を明らかにする
■説明・・・対象の状態の背後にある法則性や因果関係を明らかにする
ただし、社会調査の結果報告においては、説明を含まない純粋な記述はほとんどありえない。

2.質的調査と量的調査
(1)質的データと量的データ
質的(定性的)と量的(定量的)
質的データでも、それを一定の法則(女性を「1」、男性を「2」と表すことをきめる)に沿ってコード化し、様々な量的データに変換することによって、統計的な分析を行うことができる

(2)質的調査と量的調査

質的調査量的調査
主に収集されるデータ質的でータ量的データ
調査対象の相対的規模小さい大きい
主たる目的事例の全体像の把握
事例の個性の記述
仮説の素出
全体についての量的側面からの把握
全体の中での事例の位置づけの把握
仮説の検証
データー収集の方法対象・文脈に応じて柔軟になされるインタビュー・
観察など
調査票を用いての標準化された質問
面接数の特徴非構造化面接(非指示的面接)構造化面接(指示的面接)
具体的な手法の例インタビュー調査
参与観察
ドキュメント分析
個別面接調査法
留置調査法
郵送調査法
集合調査法

(3)質的調査と量的調査の関係
量的調査は、どのような事項に限定してどのような形式で質問を行いどのようなデータを収集するかについて十分な吟味を行ったうえで設計し実施しなければ、意味がない。仮説がきちんと固まっていない段階では、量的調査は原則として行うべきではない。

3.質的調査の留意点
■説明の徹底・・プライバシーの保護や結果の公表方法などについて、量的調査の場合以上に詳しく説明して了解を得なければならない
■事前の準備・・インタビュー調査だからこそ聞けるはずのことを聞く機会を逸しては、インタビュー調査の意味がない

4.量的調査の手法と留意点
(1)量的調査の手法
①個別面接調査法・・調査票に基づいて調査員が質問を行う方法。
回答に不備がある場合、その場で訂正できる。調査員の確保や時間を要すること、交通費や日当など相対的に費用がかさむ
②留め置き調査法・・調査票を一定期間預けて、回収する方法
記入漏れなど、その場で訂正できる。本人が回答したという確証が得られない。
③郵送調査法・・回収率が低くなる
④集合調査法・・学校の生徒や企業の従業員などに対象が限定されてしまう。他の調査対象者の影響を受けやすい。

(2)量的調査の留意点
■母集団と標本抽出方法の明確化
・どのような母集団の「縮図」となるような標本を抽出するかを明確に決める必要がある
・調査票を公表するには、どのような母集団からどのような方法で標本を作成し、最終的にどれだけの有効な回答を得たのかを明記する必要がある
■調査票の作成は項目の吟味からはじめる
調査によって何を明らかにしようとしているのかを確認し、必要最小限の質問項目を吟味・設定してから具体的な質問文の作成を行うべきである
■選択肢形式と自由回答形式
■択一式と複数回答形式
「複数回答形式の中から上位3つまで」という質問は、優先順位をつけなければならない回答者の負担が大きいので、基本的には避けるべきである。
■選択肢設定の原則
・回答者は、必ずどれかを選ぶことができるように選択肢を設定すること
・相互排他的(内容が重複しない)であること
■ステレオタイプの使用やバイアス質問をしない
■質問の意味は明確にする
■ダブルバーレル質問(ひとつの質問のなかに二つ以上の問いを含むこと)をしない
■一般的ではない言葉の使用は避ける

5.量的調査のデータ処理の基本
(1)エディング、コーディング、クリーニング
■エディング・・回収票について、不明瞭な記載屋記入漏れ、不完全な回答、論理的に矛盾する回答がないか確認し、必要に応じて、対象者に再確認して訂正すること
■コーディング・・回答を分析のために、一定の規則にしたがってコードに置き換える作業のこと
・「はい、いいえ」をそのままコードに置き換える・・・プリコーディング
・自由回答を一定の基準にしたがってコードに置き換える・・・アフター・コーディング
■クリーニング・・誤りを訂正すること

(2)分析の基礎
■データの特徴の把握
表による把握・グラフによる把握・統計量による把握
■変数間の関係の把握
散布図やクロス票





9.情報のリテラシー(1)

1.既存の文献・資料を探す
市民が社会の問題を解決しようとするとき、その対象となる問題とそれを取り巻く状況などについてより深く知る・調べることが必要になる。

(1)学術論文を探す
■検索する
OPAC(オンライン所蔵目録)
CINII(サイニィ)・・どこの図書館に所蔵されているかわかる
Google Scholar

■書架を見る
図書館で書架を見る方法があるが、貸し出し中であったり閉架書庫があったりするので、あくまで補助的な方法である

■文献の読み方
目次と序章と終章にあたる部分だけでよい

(2)統計資料を探す
■公的統計
国勢調査・・日本国内に住んでいるすべての人を対象として、1920年以来、ほぼ5年ごとに実施されている。
事業所・企業統計調査・・1947年から定期的に実施されている

2009年から
オーダーメイド統計・・申請者の注文に応じて集計を行いその結果を提供するもの
匿名データの提供・・匿名化されたデータを分析のために貸与するもの
どちらも、利用目的が学術研究や高等教育の発展に資するものであるという条件付きであり、手数料もかかる。

■民間統計

(3)データ・アーカイブの活用
近年、社会調査で得られたデータは、公共的な財産でもあるという考えから、データを公開する作業を担う「データ・アーカイブ」がある。
東大社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター、阪大、兵庫教育大など

2.社会調査の基本的な種類
(1)統計調査
国や自治体などの公的機関が、行政運営や政策立案などの基礎的な資料とするために、個人や世帯、事業所などを対象として人口や経済活動、生活状況などの基礎的な状態を把握するために実施している調査

(2)市場調査
商品の生産者や提供者が、商品の販売を成功に導くために必要な条件を明らかにするために行う調査

(3)世論調査
新聞社などのマスメディアや政府・民間の調査機関などが実施する各種の世論調査

(4)学術調査
社会の様々な事象について、経済的あるいは実務的な利害を直接的な目的とせず、学術上の問題関心から何らかの知見を得るために実施される調査

3.社会調査の結果を読む際の注意事項
デタラメな自称「社会調査」も少なくない。また、正当な方法でも解釈に偏りがある場合もある。
(1)定義を確認する
その調査において用いられている用語・概念の定義の確認
(例)政府の労働力調査
完全失業者・・・調査期間中に仕事をしなかった・仕事があれば就くことができる・仕事を始める準備をしていた
この3つを定義としている。就活をやめた人間は含まれていない。

(2)対象を確認する
■母集団と標本
状態を明らかにしたい集団(母集団)に対し、すべてに調査を行うことを「全数調査」という。母集団のなかからサンプルを選び出す調査を「標本調査」という。標本調査の場合は、母集団の状態をできるだけ正確に推測することができるように、標本を抽出するように努めること。

■単純無作為抽出法(ランダム・サンプリング)
調査者の作為を加えないことを原則として、母集団から標本を抽出する方法である。
ターミナルなどでアンケートを行うことだと思われているが、誤りである。

■系統抽出法
最初の標本をくじ引きの要領で抽出し、2度目以降は一定の間隔で抽出する

■多段抽出法
全国の市町村のなかから市町村を抽出し、抽出された各市町村の有権者の名簿から個人を抽出する

■層化抽出法
調査項目に関連すると思われる重要な指標に注目して母集団をあらかじめいくつかの層に分け、それぞれの層に標本数を割り振ったうえで標本を抽出することにより偏りを抑える方法

■RDD法
電話調査(ランダム・ディジット・ダイアリング)
固定電話を設置していない世帯は、母集団に含まれない

(3)回収率や回答者の偏りに注意する
回収率が100%に近いほど、母集団を推測する際の精度は高くなる。ところが実際は100%より低い値となる。

(4)ワーディングを確認する
質問紙を用いた調査では、どのような質問が行われたのか(ワーディング)に、注意を払う必要がある。

■ステレオタイプが用いられていないか
社会事象について、価値判断のニュアンスを伴う言葉が使われていないか
「あなたは女性の腰掛け就職についてどう思いますか?」

■バイアス質問がされていないか
バイアス質問・・・特定の回答を誘導する質問
「A政党が批判されていますが、あなたはどう思いますか」

(5)調査が実施された文脈に注意する
その調査が、どのような主体によって、誰に対してどのように行われたのか

8.責任を引き受ける

1.責任転嫁
社会の問題を解決しようとする際、複雑な状況や多様な主体が関わるため、結果をだすことは容易ではない。しかし、責任を社会や国に押し付けるのは、未熟な思考法である。

市民団体がこうした責任転嫁に陥りやすいのは、過去に市民が政治の部外者であった時代があり、市民が政治的に成熟した思考法を身につけてこなかったからである。しかし、いつまでもこうした段階に留まるべきではない。

2.政治の倫理
(1)状況
状況に適合した政策を採用すれば、問題を解決できるであろうが、そうでなければ、問題を解決することはできない。
しかも、状況は一定不変ではなく、日々刻々と変化している。それゆえ、ある政策が効果を発揮しやすいタイミングと、そうでないタイミングが存在する。

(2)主体
行政職員は、責任を恐れる。重要なのは、そうした行政職員の習性を所与としつつ、結果を出そうとすることである。そのために、行政職員に責任の逃げ道を用意することも必要である。

(3)決断
市民自治の実践では、結果を出しにくくする状況的要因と主体的要因が作用している。

3.責任とはなにか
(1)結果責任
市民が社会の問題を解決しようとする際、問題解決を困難にする状況的要因や主体的要因を所与としつつ、それにも関わらず結果をだすために結論を下すという思考法が求められている。

■2つの留保点
①目標を設定しなおす柔軟性をもつこと
②過大な責任を負うべきではない

(2)失敗を活かす
結果をだせなくても、自責の念に駆られる必要はない2つの理由
①市民自治の実践では、不完全な情報をもとに判断・行動せざるをえない以上、失敗は避けられない。
②どんな失敗も完全な失敗はない
失敗を活かしていくことが重要である。

7.合意を形成する

1.合意形成力不足
市民が社会の問題を解決しようとする際、政府や企業と対立するかもしれない。そのような場合、どのように合意形成をすればよいか。
「おまかせにせず、自ら汗をかき、泥をかぶる」

民間で何かを始めるときは、基本的に「この指とまれ」方式である。この方式では、合意形成の技術を発達させるのは難しい。市民団体も、社会の問題を解決するために、合意形成の技術をみにつけて行かなければならない。

2.討議
1960年以降、パブリック・コメントが制度化されている。
パブリック・コメント・・・政策案を国や自治体のホームページなどで公開し、広く市民の意見を募集し、政策案の修正に活用する制度である。

ミニ・パブリックスとは、無作為抽出によって縮図化された社会を意味している。無作為抽出された市民が討議を行い、その結果を市民が共有するとともに、国や自治体の政策に反映させようとするもの。

討議では単に主張するだけでなく、そのように主張する論拠を挙げることが求められる。
(例)教師が学生に「水をいっぱい持ってきてくれないか」と要請した場合、下記の三つの妥当要求という考え方を示している。
①近くに水道がないため、授業中にもってこられない(真理性)
②教師は学生を使用人のように扱うことはできない(正当性)
③教師は、単に学生に恥をかかせようとしているだけではないか(誠実性)

こうしたミニ・パブリック型の討論民主主義は、すでに対立の構図が成立している場合には、うまくいくとは限らない。

3.交渉
(1)立場駆け引き型交渉
交渉にあたる際、強硬姿勢でいくべきか柔軟姿勢でいくべきか、と考えやすい。しかし、このような二者択一を放棄することである。

(2)原則立脚型交渉
①人と問題を切り離す
②立場ではなく利害に焦点をあてる
③複数の選択肢を用意する

6.社会を動かす

1.資源不足
人々の心に響くメッセージを発するためには、フレーム/フレーミングが、決定的に重要になる。フレーミングとは、特定のフレームを自覚的に考案・採用する行為である。同じメッセージでも、あるフレームでは人々の心に届かないのに、別のフレームでは人々の心に響くことがありうる。社会を動かすためには、人々の心に響くフレームを考案・採用できるかどうかが勝負どころである。

2.フレーミング
(1)現実解釈の多様性
人々の心に響くフレームを築く第一歩は、現実が多様に解釈できることを自覚することである。
ひとつの現実であっても複数のフレームで解釈することが可能である。ところが、人はひとつのフレームに慣れ親しんでおり、それこそが唯一のフレームだと思い込みやすい。

社会科学の世界では
フレームが事実に反していないかどうか(真理性)
共有された社会的価値を侵害していないか(正当性)
が問われる。が、市民自治の実践では、これらに加えて
そのフレームが目的を達成するのに効率的であるかどうか(有効性)が問われる。

(2)フレーミングの具体例
可動堰は洪水の防止にならないというフレームより、住民を無視しているというフレームの方が徳島市民の心に響くものであった

3.メデイア
(1)インターネット
選択肢が多い場合、人間は自分の意見に近い考え方を聞こうとする。関心や政治的信念のはっきりしている人は、自身の考え方に合うサイトや会議室を選ぶ。少なくとも、現時点では政治家を動かす力にはなりえていない。

5.市民団体を組織する

1.フリーライダー
活動によっては、ボランティアを絞り込むことも必要である。本当にやる気のある人だけが残るという仕組み。

■なぜ市民活動に参加したがらないのか、なぜ寄付をしないのか
それは、フリーライダー(タダ乗り)がいるから。活動に参加しなくても恩恵を受けられるから。しかし、参加するものもいる。これには、マズローの動機づけ理論が使えるが、目の前にいる市民を抑えきれない。

2.活動参加
(1)調査結果
■活動に重視する点
目的や活動内容が共感できる
信頼できる役員やスタッフがいる・・など

■活動に参加したいと思わない理由
参加する時間がない
参加する機会がない・・など

(2)ボランティアを集める
川喜田次郎の「組織開発論」
仕事は、メンバーにとって難しすぎても易しすぎてもいけない。メンバーがベストを尽くして9割まではうまくいくであろう・・というあたりの難しさがよい。また、リーダーは信じて任せること。報告に来たら、成功しても失敗しても、一緒に結果を味わおうということが大事である。

3.寄付
(1)調査結果
■寄付をする際に重視する点
目的や活動内容が共感できる
寄付金が有効に使ってもらえる・・など

■寄付をしたいと思わない点
寄付をしたあとの効果が見えにくいから
経済的に余裕がないから・・など

(2)寄付を集める
私たちの事業によって生活できる人が溢れているということ、これが雄弁なアピールである。私たちも喜んで働くし、お金のだし甲斐もあるというものである。

4.社会の問題を解決する

1.現実主義と理想主義
日本人の現実の概念
①現実を「与えられたもの」としてしか捉えず、「日々造られていくもの」として捉えない
②多次元的な現実を一次元的にしか捉えない
③「その時々の支配権力が選択する方向」を現実と捉え、逆に、反対派が選択する方向を「観念的」「非現実的」と考えやすい

どのように現実主義と理想主義という二つの落とし穴を回避しつつ、社会の問題を解決してい方法は、落とし穴に落ちないように、一つ一つ手順を踏んで思考していくことである。

2.問題解決の手順
(1)問題の定義
定義とは、意味を明確にすることである
問題を、理想と現実のギャップとして定義する。
(放置自転車・・0台、100台)

(2)原因の把握
原因は一つとは限らない

(3)目標の設定
現実をいつまでに(横軸)、どこまで(縦軸)理想に近づけるか

(4)政策の立案
政策を立案するときに、「良いか悪いか」の判断をしないこと

(5)政策の評価
市民自治の文脈では
①政策は実現性の基準を満たしていなければならない
②政策は有効性の基準を満たしていなければならない
③政策は公平性の基準を満たしていなければならない
④政策は平等性の基準を満たしていなければならない

最後に、効率性の基準も無視できない。
効率性・・・同じ効果をあげるのに、どれぐらいコストを抑えることができるか

(6)政策の決定
個々の政策の評価を参照しつつ、政策を決定する

3.市民自治の思考法Ⅱ

1.常識の限界
(1)社会科学と常識
①個人レベルの趣向は社会レベルの趣向と必ずしも一致しない
②社会レベルについて考えることは、相互性が必要である

(2)意図せざる結果
■社会科学のテーマ・・・善い行為が集まれば善き社会が生まれるか
・マンデヴィル「蜂の寓話」
利己心や自愛心が社会を実際に構成する原理であり、こうした情念が公共の利益を生む
・アダムスミス「見えざる手」
各人は見えない手によって、意識になかった目的を推進するようになる
・ロバートマートン「予言の自己成就」

(3)合成の誤謬
個人の性質の合成が、同じ性質の社会を作るとは限らない(個人として強い兵士を集めても、それが強力な軍隊になるとは限らない)

2.囚人のジレンマ

3.相互性へのまなざし
(1)合理的期待
単純に、どうすれば一番効率的に自分のしたいことができるのか、を合理的に考えれば良い。また同時にそれは、相手の合理的な選択を予測するという作業であり、相手に対して期待を抱くという営みである。これを「合理的期待」と呼ぶ。

(2)規範的期待
交通法規という規範に運転手が従うことが一般的に期待されている

(3)機能的期待
人は社会に生きるとき、様々な役割を担う。これは、役割を背負う人に対して、我々が何らかの標準的な行為をすると期待していることを意味する

4.社会科学の視座(基本的な視点の取り方)
社会的な事実を物のように考察すること。このような方法手続きをとれば、見かけは気まぐれに見える諸事実も、より注意深い観察に対しては、やがてそれらの客観性の兆候である恒常性と規則性という特徴を示すようになるのが認められ、人はしばしば満足をうる(デュルケム)


2.市民自治の思考法Ⅰ

1.市民自治と主知主義
■主知主義・・・人間の事柄を考えるときに、知識を中心に学ぶこと(知識中心の活動)
ソクラテス「人が善きことをなすためには、(善とは何か)に関する知識が不可欠だ」と主張した
■主意主義・・意識を中心に活動を行うこと
キリスト教の教え「善の知識があっても意志がなければ善を行うことはできない」

2.学問の倫理
(1)学問の限界
現代において学問は、ただ専門化によってのみ可能となる
・学問を使って自分の名を売ろうとするもの
・「専門家ではない」といい、自らの「体験」を前面に出す人物
これらは。学問にむいていない。学問に専心するものは、自らの成果が常に誰かに乗り越えられることを当然とし、学問の発展によって自らの仕事が取るに足らないものであること希望しさえするのだ(ウエーバー)

(2)学問の価値
学問は「それ自身」のためにある

(3)学問と実践
三つの仕方(ウエーバー)
第1に、学問は我々の実践における予測可能性を高めることができる
第2に、学問は我々の思考力を高める
第3に、学問は実践そのものを明晰化する(自らを反省することができる)

とくにウエーバーは3の貢献を重視している。
各人のもつ価値が衝突する社会に我々は生きている。何かを選べば、何か都合の悪いことが出てくる。これを明らかにすることが学問である。

3.政治の倫理
(1)価値自由と政治的実践
政治家は票を取るために良いことばかり言うが、政治学者は都合の悪いことを言わなくてはならない。すべての人に都合の良いことはありえない。

(2)価値多元性と政治家の資質
政治家という職業に普遍的にあるものは「権力感情」である。これは、「情熱」「責任感」「判断力」である。

(3)心情倫理と責任倫理
心情倫理・・動機の正しさ
責任倫理・・結果の正しさ
ウエーバーは、後者を重視する。善い目的を達成するには、人はしばしば「道徳的にいかがわしい手段」を用いなければいけない。

政治家は、自らの結果に責任を取らなければならない。また、「しかたがない」「予想できなかった」と言ってはいけない。心情家は政治家にはなれない。

4.市民自治における学問と実践
(1)責任倫理と学問的知識
実践に携わるものは、学問的知識を利用することで、責任結果を負うことができる。逆に言うなら、実践家が知識を無視するなら、それだけ無責任な行為をすることになる。

学問によって我々は、実践を目的ー手段という観点から、その合理性を問うことができるようになる。

カリスマ(人間的魅力)、レトリック(言語による説得)
この2つが政治家に必要な資質である。学問の合理性だけでは、人は動かせない。

(2)市民自治と政治
自治への参加は自由意思によるものである。しかし、結果を考慮しなくてもよいというものではない。市民自治もある種の政治である限り、責任倫理から逃れるべきではない

5.専門知と市民自治
市民が学問を極めることは難しい。そこで、専門家が実践を統合する必要がある

専門家が地域に入る場合は、統合ではなく自治のほうが生かされることが多い。専門家と一般の人が結びつき、お互いに連絡できるリテラシーが必要である。



1.市民自治とは何か

1、松下圭一の市民自治概念
国家の概念を使わない
国民は政治の最終的で最高的な権威たる主導者であるはずなのに、政治の主体というより客体にとどまってきた⇒市民が国に(下から上に)権利を移していく

2.市民と市民社会の概念
西洋中心で長い歴史がある

3.自治の概念
日本中心。比較的新しい

4.自治と統治
統治ではなく「自治」
自発的な結社として思念するとき、この統治の要素が忘却されてしまう。そうした忘却が、しばしば自治のリーダーの独善化を生み、自治を解体させてしまう原因となる。自治も権力を伴うことを示している。

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Mikami Kako

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おことわり

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